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4.4 各時間足への意味付け

それではいよいよ、損切りの具体的な典型モデルの作成に入っていきますが、最初に本節以降の構成について俯瞰的に説明しておきます。

本節以降の構成

本節以降では、最初に4.3 各時間足への意味付け(本節)、4.4 15分足基準でエントリーする意義4.5 損切りの短期典型モデル4.6 損切りの長期典型モデルにて必要性の観点から損切りを考え、損切りすべき場面の典型モデル化を図り、リスクの範囲を現在のマーケットの状況の観点から限定します。

その上で、4.7 損失の許容絶対額にて許容性の観点から損切りを考え、損切りから逆算して最大ポジションサイズを決定し、リスクの範囲を自己資金の観点から限定します。

4.8 損切りモデルから逆算したエントリーの最終基準にて、そうしてリスクを限定した中で、着実に利益を上げていくためのエントリーとイグジットの手順を説明します。

こうして損切りの要素を全て分析した上で、4.9 損切りの典型モデルを構築する意義を再確認するにて改めて損切りの典型モデルを出発点とする方法の意義を考えていきます。

損切りには必要性と許容性との二つの観点がある

損切りには、必要性許容性との二つの観点があります。

必要性とは、マーケットの状況やチャートの動きから考えて、建値に戻ることが難しいか若しくは戻るにしても相当な時間的損失が出る可能性が高まった局面で、損切りをしなければならない状況です。

許容性とは、一回当たりのトレードにおける最大損失許容価額です。すなわち、最悪でもこれくらいの範囲内の損害だったら継続的に資産を増やしていくための致命的なダメージにはならないから許されるという範囲です。

必要性の観点からみた損切りライン

この節では、この二つのうちの必要性の観点からみた損切りの局面を典型モデル化するための前提を説明します。

必要性の観点、つまり損切りを必要とする場面は大きく二つに分けられます。一つはファンダメンタル分析に基づく損切りライン、もう一つはテクニカル分析に基づく損切りラインです。

ファンダメンタル分析に基づく損切りラインの設定については、その時々の状況に応じた判断となり、これは戦術論を前提とする応用的な判断となります。そして、テクニカル分析は、チャート上にファンダメンタルズも含めたあらゆる現象が価格の動きに反映されているという思想を前提としており、概念としてはファンダメンタル分析を内包します。そのため、戦略論に分類される本4章では、まずテクニカル分析に基づく損切りラインについて分析し、最終的に最も基本となる損切のパターンの典型モデル化(参照:4.5 損切りの短期典型モデル4.6 損切りの長期典型モデル)を目指します。

テクニカル分析に基づく損切りラインを考えるに当たっては、まず、テクニカル分析の最も基本的な要素であるチャートを第一に考えなくてはなりません。そしてチャートを構成する最も基本的な要素は時間足です。そこで、テクニカル分析に基づく損切りラインを検討する前提として、本節では各時間足の果たす役割を詳細に定義づけていきます。

それぞれの時間足の果たす役割をどう考えるか

まず、最初に決めておくことは、チャートのそれぞれの時間足への意味付けです。全ての時間足が同一のトレンドを示すことは滅多にありません。むしろ、それぞれの時間足で異なるトレンドを示すことが通常です。にも関わらず、それぞれの時間足に対する視点がフラットでは、判断のしようがありません。

もちろん、時間足に対する評価判断は、目指すトレードスタイルおよび各人の資質と適性とによって決定される属人的な性質を強くもちます。しかし抽象的に考えていくことは難しいため、具体的事例として私が利小損大戦略のもとで、デイトレードにおいてもっとも頻繁に使用する時間足に対する価値判断のセットを示してみたいと思います。当然のことながら、これが唯一絶対の正解であるわけがないですし、私自身、マーケットの状況に応じて微調整をしながら用いるものであることを申し添えておきます。

月足

=今月が陰線か陽線か、歴史的な高値・安値、極端なトレンド発生の確認

今月が陰線か陽線かは、最も原始的なトレンド判断の一つです。そのため、その月の始値は必ずチェックしておきます。なお、これは月足を用いた判断といえど、以下の二つとは異なり、あまり深刻に考えず参考程度の感覚で大丈夫です。

デイトレードにおいても、月足レベルにおける歴史的な節目となった高値や安値は必ずチェックしておくべきです。これらはサポート・レジスタンスとして強烈に作用する場合があります。

また、滅多に観測されるものではないですが、月足レベルのトレンドが明確に観察される場合は、少なくとも半年以上は持続する可能性があると仮定し、基本的なトレンド目線として用います。これはチャート単体で判断するものではなく、ファンダメンタル的な裏付けを必要とします。具体例を挙げれば、株式なら大型の金融緩和が実施された場合、為替なら金利に大幅な変更があった場合、仮想通貨でいえば何らかの革命的な技術革新や政策がなされた場合などです。これらのファンダメンタルが実際にマーケットに反映されていることの裏付けとして月足チャートを確認します。デイトレードレベルのトレンドライン、すなわち日足や1時間足レベルのトレンドラインは事象の事後性を考慮した上でトレードに用いなければなりませんが、月足のトレンドは明確なファンダメンタルに基づく根拠があり、安易にその転換を期待して逆張りをしてはなりません。トレンド判断の観点からは月足は特殊な足であるということです。なぜなら、一般的な時間足としては最上位であり、最上位であるがゆえに限界が無いからです。人間でもそうですが最上位の集団は天井が無いゆえに飛びぬけた存在がいる可能性があります。そうそう発生するものではないですが、月足のトレンドには絶対に逆らってはなりません。地獄の底に連れていかれます。

週足

=今週が陰線か陽線か、今週の高値・安値

今週が陰線か陽線かは、最も原始的なトレンド判断の一つです。そのため、その週の始値は必ずチェックしておきます。

週の後半では、週内の高値・安値は把握しておかなくてはなりません。これはサポート・レジスタンスとしての役割を期待するというより、それらのブレイクが確認されれば、当日のトレンドの根拠とすることを目的とします。

3日足

=高値・安値

直近3日間の高値・安値を確認します。これも、サポート・レジスタンスとしての役割ではなく、それらのブレイクが確認されれば、当日のトレンドの根拠とすることを目的とします。

3日足は、為替や株式においては用いません。ビットコインをはじめとする仮想通貨においてのみ用います。仮想通貨のマーケットは土日祝日も動いているため、通説的見解に基づくテクニカル指標のパラメーターが、そのままでは上手く作用しないケースが多々あります。時間足も同様に、3日足はそのような仮想通貨における不都合性を修正する要素としてうまく作用します。

とりわけBTCでは、3日足を週足・日足よりもその重要性を高く評価し判断基準として優先させます。このためデイトレードにおける長期モデル(スイングを含む)においては、トレンド判断にせよ具体的なロスカットラインにせよ、3日足を中心に考えます。

日足

=長期トレンドライン、前日と当日の高値・安値、当日が陽線か陰線か

デイトレードであっても日足のトレンド判断は重要です。チャネルラインを実際にチャートに描画します。

日足については、高値・安値はサポート・レジスタンスとして強く作用する場合がありますので、週足や3日とは異なり、サポートライン・レジスタンスラインとして意識します。なお、前日の高値・安値も同じように意識します。ただ、仮想通貨の場合は、前日の高値・安値よりも3日足の高値・安値を意識します。

当日が陰線か陽線かは、最も原始的なトレンド判断の一つです。したがって、どのマーケットにおいても始値は必ず把握しておきます。特にデイトレードにおいては日足の陰陽は重要であり、瞬間的な判断が要求される場合もあることから、一瞬で直観的に把握できるよう必ずモニターの一部には日足のチャートを表示しておきます。

4時間足

=オシレーター、陰線陽線の連続性と切り替わり

為替・仮想通貨において、オシレーターを最重視する足として用います。4時間足レベルで買われすぎ或いは売られすぎをオシレーターが示す場合、ひとまずそこで反転する可能性を考慮し、一旦は逆張り目線に切り替えてマーケットを観察します。また、トレンドが持続する場合でもダイバージェンスが発生している場合には強く警戒します。

また、4時間足が切り替わるタイミングで陰線・陽線が逆になることがよくありますので節目の時間は警戒します。注意しておくべきは、為替の場合、ニューヨーククローズ(NYC)を基準とする故に、夏時間と冬時間とで切り替わる日本時間が異なることです。具体的には、夏時間では06時・10時・14時・18時・22時・02時に、冬時間では07時・11時・15時・19時・23時・03時に切り替わります。

1時間足

=中期トレンドライン、陰線陽線の連続性と切り替わり、陰線陽線の伸縮率

デイトレードにおけるトレンドラインの判断として中心となる時間足です。チャネルラインを実際にチャートに描画します。おおよそ一週間、すなわち直近5日~10日程度の範囲でのトレンドラインを把握します。

1時間足が切り替わるタイミングで陰線・陽線が逆になることがよくありますので節目の時間は警戒します。

また陰線・陽線が連続している場合は、その長さが徐々に長くなっているか或いは徐々に短くなっていないかに注意を払います。5分足と並び、9.13 つまるところトレンドとは何なのかで述べているマーケットのエネルギーの漸次的な増加や減少が観察されやすい時間足です。

15分足

=為替・仮想通貨における思考の中心

為替・仮想通貨のデイトレードにおいて思考の中心として用いる時間足です。15分足をどのように用いるかによって短期・中期・長期の各モデル化がなされます。具体的には、4.6 損切りから逆算したトレードの典型モデルにて説明しています。

5分足

株式における思考の中心、陰線陽線の伸縮率

株式のデイトレードにおいて思考の中心として用いる時間足です。(参照:4.6 損切りから逆算したトレードの典型モデル) 一週間のチャートを5分足で表示させ、VWAPとオシレーターを用います。

為替・仮想通貨に関しては、24時間分の5分足を表示させておきます。当日の動きが直観的にわかるようにするためです。特に為替においては、日本時間・ロンドン時間・ニューヨーク時間のそれぞれにおいてどう変化したかが分かるよう、市場時間ごとに色分け表示できるインジケーターを使用しています。

また陰線・陽線が連続している場合は、その長さが徐々に長くなっているか或いは徐々に短くなっていないかに注意を払います。1時間足と並び、9.13 つまるところトレンドとは何なのかで述べているマーケットのエネルギーの漸次的な増加や減少が観察されやすい時間足です。

1分足

=エントリー時・イグジット時以外でのマーケットの観察、センサー

実際にエントリー・イグジットする場合は10秒足を基準に行いますが、ポジションを持っていない状態でマーケットを観察する時は、10秒足だと変化が激しすぎて感覚が狂いやすくなるので、代わりに1分足を見ていることが多いです。

また、突発的な出来事が発生していないかを計るセンサーになりますので、例えば為替の場合、取引していない主要通貨に関しても、画面の隅に小さく1分足のチャートを必ず表示させておきます。

為替では10pips単位の節目のラインで横線を引き、これらを1分足レベルでのサポート・レジスタンスと見做し、その節目付近での価格の動きを観察します。ラインは手動ではなく、自動で引いてくれるMT4のインジケーターが色々ありますので好きなものを利用しましょう。

10秒足

=実際に注文を出すタイミングを計る

現在進行中のトレンドを計るには便利な時間足です。エントリーを決めたあとに具体的なタイミングを計る際に用います。TradingViewの有料プランでみることが出来ます。一部のFX業者では口座を開けば無料で使えるようなのでそれでも構いません。

75本移動平均線と25本移動平均線、MACDを併用します。9.15 トレンドの継続をいかに確認し捕捉していくかにてデイトレードにおけるゴールデンクロスの利用に対する警告を述べていますが、例外的に10秒足については、移動平均線やMACDのゴールデンクロスを素直に解釈していきます。超短期足ゆえに、ゴールデンクロスのもつ事象の事後性の可能性という欠点をあまり考慮する必要がないからです。移動平均線自体についても、75本移動平均線を上回っていれば上昇トレンド、下回っていれば下降トレンドと素直に判断します。25本移動平均線は価格のサポートおよびレジスタンスの役割を主に、75MAに対するゴールデンクロスの基準として用います。

テクニカル指標やオシレーターの用い方

好みに合うものでよい

何を使うか、パラメーターをどう設定するかは状況によって変わりますが、RSI・RCI、10秒足ではMACDをよく使います。興味本位で変わったものを色々試すこともありますが、継続的に使用することはあまりありません。自分の好みに合うもので問題ないと思います。

シンプルな方がよい

注意点としては、あまり複雑にしてしまうと判断要素が多くなりすぎ弊害がでてきます。こんな程度で大丈夫だろうか、と不安になるくらいシンプルな形で個人的には問題ないと考えています。何事にも言えますが、複雑なものが必ずしも良いとは限りません。

判断の優先順位としては低い

テクニカル指標やオシレーターは、あくまでも時間足の解釈の補助として用いることが原則です。重要なことは明確で具体的な損切りラインの設定(本4章で解説)であり、サポートとレジスタンス(5章で解説)、トレンド判断(9章で解説)の方がはるかに重要です。ただ、エントリーではなく利益確定の目安としては使いやすいと思います。

移動平均線について

移動平均線は、トレンド判断においては重用しますが、実際のトレードにおける直接的な根拠としては基本的には用いません。移動平均線に基づくトレード典型モデルを用いる場合は、必ず損切りから逆算したトレード典型モデルも重畳的に適用すべきです。

移動平均線はサポート・レジスタンスとして働くことがありますが、多くなりすぎては意味が無くなります。後からチャートを説明する分には「何本足の移動平均線で反発した」と言えますから便利な概念ですが、デイトレーダーとしてはリアルタイムで判断していかなければならない以上、多数の移動平均線を描画してそれを逐一サポート・レジスタンスとして意識してしまっては、判断が無駄に複雑になりすぎ、しかもその判断をモデル化することは極めて困難です。継続的に利益を上げる必要のある専業の場合、再現性のない手法は意味があまりありません。したがって、高値・安値等のサポート・レジスタンスより、トレード判断の優先順位としては基本的には低くなります。ただし一部の戦術的例外(一例:戦術論 トライアングルからトレンド発生→最初の調整→最初の移動平均線への接触)はあります。また、最初に述べたように、トレードの前提となるトレンド判断においては重要な役割を果たします。

トレード環境について

時間足は、週足・日足・4時間足・1時間足・15分足・5分足・1分足については、一覧して見られるようにしておいた方が良いです。もちろん、全てのチャートにおいて広く領域をとる必要はありません。たとえば5分足なら24時間~48時間程度でいいですし、週足についてはリアルタイムで表示させる領域は今週が陰線か陽線かがわかれば最低限問題ありません。

それでも、トレーディング用に1台、情報収集用に画面の切り替えを最小限で済む解像度の高いモニターを1台、つまりできたら2台はモニターを用意することが望ましいと思います。

解像度が高いモニターは便利ですが、字も小さくなり少し見にくい感覚もあります。私の場合は、情報収集用のモニターは最大の解像度で使用していますが、トレーディング用のモニターはあえて解像度を抑え、大きく表示されることによる操作の利便性を優先させています。

かつてはモニターのサイズも小さく、また解像度も低かったために多数のモニターを使用していましたが、現在では解像度も高くなり、また必ずしも多数のモニターが効率的で高度な情報収集に資するとは限らないと考えるようになり、数台で十分と考えるようになりました。なお、デスクトップパソコンにこの二つのモニターを接続しています。状況によってはもう一台ノートパソコンを用いることもあります。

色々書きましたが、この点についてはそもそも正解があるものではありません。しかし、非常によく聞かれる質問なのであえて記載しておきました。正直なところをいえば、あまり神経質にならず、自分の好みと必要性に従って判断すれば大丈夫だと考えます。人によってはスマートフォン一台だけで利益を上げている人もおり、唯一の正解があるものではありません。

次節以降では

これらの時間足の評価を基に、4.4 15分足基準でエントリーする意義ではトレードの中心におく15分足についてもう少し敷衍します。その後4.5 損切りの短期典型モデル4.6 損切りの長期典型モデルにて損切りの典型モデル化を目指します。

典型モデルは、短期モデル、長期モデルとの二つのパターンを作り、デイトレードの中でも一般的なデイトレードのイメージの短期取引での考え方と、デイトレードの中でも比較的長大な時間軸を基準に考える長期取引(イメージとしてはスイング)とに分けることで、より効率的にマーケットから利益を獲得するための損切りラインの設定について考えていきたいと思います。

▷次節:4.4 15分足基準でエントリーする意義

-4 損切り