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4 損切り

4.7 損失の許容絶対額

損切においてもう一つ問題になるのは、許容性の観点、すなわち一回のトレードにおいて発生する損失の限度額です。10分足モデルにおいては3日足レベルのサポートを1日足の終値で割った場合と設定しますが、実際にこの事態が発生した場合にはどの程度の損失額になるのかを予め予測しておき、その額を一回のトレードにおける損失の限度許容額以内に収めておく必要があるということです。そうすることで、逆算してエントリーの際のポジションの額の目安が導かれることになります。

これは当然、資金におけるパーセンテージとして考える必要があります。-3%~-5%とする教書が多いですが、私は-15%で設定しています。この論点に限らず、教書は利大損小の戦略を前提としてその手段を説いている場合が多く、その観点からは-3%~-5%の設定は取りうる戦略でしょうが、利小損大、すなわち一回の損失額が大きくなる可能性をリスクとしてとりつつ、大部分の取引においては利益で決済する戦略の下では、-3%~-5%の設定は過剰なリスク管理となります。仮に、3日足のサポートを1日足で割った場合に損切するとして、その額が資金の3%~5%程度でしかないとすれば、エントリーのポジションサイズは極めて寡少なものとなり、いくら利小といえども狙える利益額があまりにも小さすぎます。目的は利小損大そのものではなく、利小損大の戦略のもと短期間で寡少な資金から大きな利益を獲得することです。

逆にいえば、このうち「短期間で」という部分を犠牲にするならば、-3%~-5%の設定額は一考の余地はあります。その方がより確実性は高まるでしょう。少なくともあまりテクニカル分析やファンダメンタル分析が得意でなく個々の取引の勝率が高くない人は、-15%より保守的な額に設定した方がよいでしょう。

ここで一つ問題となることがあります。それは3日足のサポートを1日足で割ってはいないのだけれども、含み損の絶対額が資金のー15%以上となってしまった場合にいかに判断すべきかという問題です。すなわち、テクニカル上の損切ラインと絶対額としての損切ラインとのどちらを優先して判断すべきかという問題です。

もちろん最初に述べたように、基本的には3日足のサポートを割ったときに生じる損害額がー15%以内に収まるように最初にエントリーのポジションサイズを設定すべきです。しかし、一年の長い相場の中においては、チャンスだと考えてあえてモデルを無視して大きなポジションをとるケースは起こります。後に述べる予定ですが、寡少な資金を大きく増やす戦略においては、最初の資金設定が少ないという時点でかなり大きなリスクヘッジがされています。もちろんそれだけの資金しか用意できないという止むを得ないケースもありますし、大きな資産額がありながらも敢えてこの戦略をとるケースもあります。いずれにせよ、どうせなくなっても原資は数十万に過ぎないという時点で、一定のリスクヘッジはなされています。そのような観点から考えると、自分のポジションが将来救出される一定の直感が有る場合には、-15%以上の含み損でも3日足のサポートを割るまでは耐えるという戦略は十分に合理性があります。というのも、たとえばロングポジションをとっていたが、その直後になにか突発的な出来事が起こり極端に下落したようなケースを考えた場合、下落の始まった時点での値とその下落における最安値との幅を1とした場合に、38.2%・50%・62.8%程度のゆり戻しがあることは多く観察されます。いわゆる半値戻し、もしくはフィボナッチ係数として知られるこれらの調整局面が高い確率で生じることを考えれば、機械的にー15%のラインで損切を実行することは教条主義的な演繹的思考であり、マーケットに対してはあまり適性がありません。

これは損切の判断の先延ばしではありません。資金のー15%ラインはトレーダー個人の問題であるのに対し、3日足のサポートラインはマーケットの問題です。マーケットは自分の都合とは無関係に動くものである以上、自分の問題よりもマーケットの現実を優先するという合理的な判断です。ただ、それでもなお、3日足のサポートを割り損切りしなければならない場面も起こりえます。この際は、必ず鋼の意思をもって、決済しなければなりません。

繰り返しとなりますが、あるルールを最初に考えてそれを機械的に相場に当てはめていく演繹的思考は相場にはそぐわないということです。常に現実のマーケットの動きにコミットし、その中からルールを創造し、かつそれぞれのルールの相関性を体系化し優先順位をつけるという帰納法的思考こそが重要です。流動的なマーケットにおいては、流動的な知性が最も効果を発揮するのです。

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