4 損切り

4.8 エントリー ~損切りモデルからの逆算

繰り返し述べているように、利小損大は、損切りを基軸とする戦略です。損切りを中心に据えるということは、エントリーの問題も損切りから逆算して検討することになります。実際のトレードの時間的経過は、先にエントリーがあり後に決済があるわけですが、思考の順番としては逆になります。

利小損大の戦略を遂行する上で一番重要なのは、損切りの確率をできる限り小さくすることです。しかし同時に、どんなに低い確率に押さえ込んでも0%にすることは不可能である以上、損切りすべき時には確実に決済でき、損失額が原資金に対して致命傷とはならないことが必要です。このような観点から4章において、損切りの典型モデルを構築しました。これを逆算して考えると、損切りの可能性が少なく、仮に逆行した場合でも損切りすべきポイントが明確である場合にポジションを建て、原資に対して致命的な価額とはならないサイズとする、という条件においてエントリーを検討することになります。

その際、どのくらいの利益額を目標値とするかは思考の中心要素とはなりません。極端な話、同値で撤退できさえすれば、時間的損失以外に失うものはないわけです。従って、保守的な利益確定が中心となります。もちろん一定以上の含み益が出ている場合に状況次第では、逆指値やトレーリングストップを置くことで積極的に利益を伸ばすこともあり得ます。ただ、逆指値を入れる場合でも、建値以上であることは、小さくとも利を確実にとり損が発生する機会をなるべく抑えるという戦略観点から、厳守すべきルールとなります

以上の思考を判断基準の優先順位の観点からまとめると、そのポジションで大きな利幅を狙えるかよりも、逆行した場合でも時間が経てば同値で撤退できるという救出可能性が高いかという点に、より大きな価値を認めるということです。これは一般にいうリスクリワード論とは解釈を異にすることに注意してください。

あるポジションをとるかを決定する際、想定される損失(リスク)と期待できる利益(リワード)とを比較し、リスクよりもリワードが多い場合にのみポジションをとるべきとするのが、リスクリワード論です。そして一般的には、このリスクとリワードの比率は価額において検討されます。リスリワード論を価額において解釈する場合には、そのような大きな利幅がとれる機会がなければエントリーしてはならない、つまり消極的なエントリー戦略となります。これは利大損小から直接的に結びつくエントリーの考え方です。

これに対して、利小損大の戦略の場合は、利益の額は僅かであっても利益を取れる可能性が高く、また逆行した場合でも救出可能性が高く、救出されない場合でも損切り基準が明確であれば、原資に対してフェイタルなものとはならないポジションサイズにおいて、利益確定の保守的姿勢とは対照的に、積極的なエントリーをしていくことになります。利益と損失との金額の比較ではく、利益をとれる可能性と損失を被る可能性との確率の比較になるということです。

利小損大の戦略のもとでは、額は小さくとも多くの回数の利益確定を目標としますから、積極的にエントリーしそれらを保守的に利益確定させます。

一般にいうリスクリワード論に代表される慎重なエントリーとは解釈を異にすることで、戦略的統一性が保持されていることに注意してください。

もちろん、大きな利幅が取れるにこしたことはありません。ただ、利益確定の効率性の問題は、戦略レベルではなく戦術レベル、つまり一段格下の問題となります。

なお、後の6章では、このような積極的なエントリー戦略下においてもなお休むべきとはどういう場合かについて考えてみたいと思います。いかなる時に行動すべきかということは、逆をいうと、いかなる時に行動すべきではないかという基準でもあります。したがって、この休むべきときを、「待機」として積極的に戦略的意義を見出していこうと思います。

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