チャート 投資

9 トレンド判断

9.13 つまるところトレンドとは何なのか

重要なトレンド反転パターンを見てきましたが、その背後にある本質を説明したいと思います。畢竟、トレンドとは何なのでしょうか。

これを理解するために、個々のトレーダーが新規にポジションを持つ際の心理的・経済的負担や既存のポジションを決済する際の心理的負担・利益額損失額、出来高量、ある時点からの価格の値幅の変化量と率、時間の経過、全てのファンダメンタル要素など、マーケットの価格形成に影響を与えるあらゆるもののエネルギーの総体の存在を観念してみます。

トレンドが発生している状態とは、このようなエネルギーの総体が発生・増大し続けている状態といえます。トレンドの初期から中期にかけては比較的低いエネルギー量ですが、末期においては急激に大きなエネルギー量を要求します。すなわち、トレンドとエネルギー量との関係は、指数関数で表されるものとなります。このエネルギーが臨界点を超えたとき、今度は逆向きにエネルギーが放出されることになります。これがトレンドの終焉と転換です。

このようなエネルギーの総体はマーケットに関わるあらゆる要素で構成されるがゆえに、これを一義に定義することは不可能です。それでも敢えてチャートの時間足の動きだけで最も単純に表現するのならば以下のようなチャートをイメージできます。トレンド初期には短い陰線が並びますが、次第に陰線が長くなっていき、末期には短時間のうちに長大な陰線を形成します。これによりエネルギーの臨界点を迎え、今度は陽線のエネルギーが放出されます。この陽線の反発が本格的な上昇トレンドの転換となるか単なる一時的なリバウンドに過ぎず再度下降トレンドが再開されるかは個々の状況によりますが、少なくとも一旦は反発のエネルギーが生まれ下降トレンドが終焉を迎えます。

理解を深めるためにもう一つ別の例で説明してみます。代表的な反転パターンであるヘッドアンドショルダーをみてみましょう。

トレンドが停滞状況の中から発生の兆しをみせる初期段階では、出来高の増加こそ必須ですが、その累積量は初期ゆえに大したものではありません。また、仮にそのトレンドの兆しがフェイクであり含み損になったとしてもその価額は大きなものではなく、それゆえにロングポジションを決断する心理的抵抗も小さくて済みます。さらにロングでもショートでも低い価格でトレードできることから必要とされる原資も比較的小額です。ところが徐々にトレンドが進捗し価格が急激に上昇した後では、ロングを持つにしても高値掴みの恐怖がありますし、ショートを打つにしても今までの上昇トレンドに逆らう恐怖があります。出来高の累積量も積みあがっています。新たなファンダメンタルも随時加わっていきますし、テクニカル上のレジスタンスにぶつかることもあるでしょう。そうしてエネルギーの総体が臨界点を迎えることによって、ネックラインを割り、今度は下方向への下降トレンドが形成されることになります。

これは観念的理解であり、具体的な取引基準が要求されるトレーディングにおいて直接に技術的な応用ができるものではありません。もちろん量子コンピューターのような莫大な情報量を処理できる電子演算機が出現し、あらゆる要素を定量化してシミュレーションできるようになれば、また違う世界が生まれるのかもしれませんが、少なくとも人知を頼みとする裁量のデイトレードにおいて具体的手法に組み込むことは不可能です。しかしながら、言語的理解や数学的理解以前の、イメージとしての重要性は極めて高いといえます。たとえば、ある外国料理を初めて自分で作ろうというときに、今まで全く見たことも味わったこともない状態から作るよりは、一度でも海外現地で実際に見たり食べたりしたことがある方が、おそらくはその完成度は高くなるでしょう。人間は、言語や数学を覚える以前、すなわち乳児から幼児期にかけてイメージで世界を理解します。すなわち、理解の原初的体験は、言葉や数字ではなくイメージなのです。トレードをする際にこのエネルギーの動きのイメージを頭に置いておきましょう。その効果を実感することは間違いありません。相場全体のエネルギーを意識し、今がどのくらいの段階なのか、初期・中期段階なのか、それとも急激にエネルギーが高まった末期段階なのかを意識することで、相場観とでもいうべき予測能力が高まります。少なくとも、チャートのパターンの形だけをみて、なんとなくヘッドアンドショルダーに似てるからエントリーしてみよう、などという粗雑で表面的なトレーディングとは縁を切ることができるでしょう。

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