9.13 転換点-変形的なダブルトップ、ダブルボトムによるトレンドの否定

典型的なダブルトップおよびダブルボトムについては、9.4 ダブルトップ9.5 ダブルボトムにおいて既に説明しました。ここでは、そのような教科書通りの形ではないが本質的に同じ現象がおきているケース、いわば変形的なパターンについて述べていきます。一見違う現象にみえても、内部のダイナミズムが共通しており本質的に同じ現象であることが見抜ければ、典型的なダブルトップ・ダブルボトムについてもより深く正確な判断ができるようになります。

変形的なダブルトップ

高値を更新できるかがより重要

つまるところトレンドとは、高値・安値を更新する挑戦が連続して成功している動きです。高値を更新しない上昇トレンドなどありえませんし、安値を更新しない下降トレンドもありません。

トレンドの判断においてはトレンドラインで図る方法が一般的ですが、トレンドラインはその傾きの角度によってトレンドの強さを事後的に測るものでしかありません。とすれば、トレンドの判断においては、トレンドラインの突破よりも高値・安値が更新できるかの方がより本質的で重要となります。

トレンドラインのブレイクによるトレンド判断は、いわば仮とでもつけるべきものであり、引き続いて重要な高値・安値を越えることができるかでそのトレンドの鼎の軽重が問われることとなります。トレンドにとっての本質は高値・安値を連続的に更新できるかだからです。

そして、ダブルトップ・ダブルボトム高値・安値の更新への挑戦に失敗した最も典型となる形です。よって、上辺・下辺のラインブレイクによるトレンド発生がフェイクであった場合にも形を変えて出現することになります。

トライアングルを突破しても、なお高値を更新できない可能性を考慮する

トライアングルの保ち合いから一方向にトレンドラインをブレイクしたものの、より大きな高値を更新できなかった結果、ラインブレイク方向へのトレンドが否定され、逆方向への強いトレンドが発生する場合があります。

図10をみると、丸の点線で囲われた部分に変形したダブルトップが出現しています。これはトライアングル上辺をブレイクしたものの、上昇トレンドにとってより重要である高値の更新に失敗したことにより発生します。

単純にみると、トライアングル内部の第ニ、第二の山の頂点は越えていることから、一見高値の更新に成功しているように見えるかもしれません。しかし、その判断は早計です。トライアングルによる保ち合いは上辺三点、下辺三点を結ぶ直線で構成されており、これらの点のうち第二の山と谷、第三の山と谷はそのトライアングルを構成するパーツの一部にすぎず、トライアングルのラインをブレイクした後では、もはや重要な意義を持つものではありません。

それに対し、最初の山の頂点は、トライアングルの中での最高値を示すものですから、重要な意味を持ちます。これを更新できなかった場合は、ラインブレイクがフェイクであったと評価するに十分であり、それゆえに今度は逆に下降トレンドへの転換サインとして機能することとなります。

ダブルトップのそれぞれの天井が、別々の概念のものである場合がある

このパターンは頻出するだけなく、ダブルトップの考えを理解する上で重要なのでもう少し敷衍します。ダブルトップとは、簡単にいえば二つの天井です。この二つの天井が、二つの時間足で並んで表れたものが典型的なダブルトップです。

図10のケースは、単純に二つの天井が並んでいるわけではなく、トライアングルの天井とラインブレイク後の天井とが二つ並んでいる状態です。いわば、別々の概念で把握される二つの天井が仲良く並んでいる状態です。トライアングルのラインを突破したからトレンドが発生したと単発的に判断するのではなく、その直前の状態であるトライアングルと絡めて慎重に判断する必要があるということです。言い換えれば、チャートをより大きな視点でとらえなければならないということです。

変形的ダブルトップ成立の判断時期

高値の更新に失敗し下落していくチャートがトライアングルの下辺を明確にブレイクした段階(図10の緑〇)でダブルトップによるトレンドの否定が成立したと判断します。このブレイクは高い確率でトライアングルの最初の谷の水平線、つまりトライアングルの中の最安値を更新します。これは上昇トレンドがフェイクだったと推測するトレーダーが多くなり、投げ売りを巻き込んで下落に勢いがつくためです。

どこでエントリーするか

では、リアルタイムのトレードではどこでエントリーすべきかが問題となります。

最も攻撃的なエントリーは、トライアングルの上辺ラインブレイク後に高値更新が失敗することをあらかじめ予想し、最初の山の頂点を通る水平線付近にショートの指値をおくことです。この判断をとるべきかは、高値のレジスタンスの強さをどのくらい強いと判断するかによって決まります。5 サポートとレジスタンスで述べたように、サポートやレンジスタンスは少なくとも一度は機能するであろうことを前提に行動すべきですが、トライアングルの上辺をブレイクした事実を踏まえると、典型的なダブルトップを予測してショートをエントリーする場合よりは慎重に判断すべきでしょう。ただ、突破され含み損になった場合でも、救出可能性はそれなりに高いと思います。

より慎重にいくなら、戻りを待ってショートを入れる方が良いと思います。トライアングル上辺を結んだラインの延長線上がレジスタンスに転化することが予想されるので、図10の赤○地点でショートをいれることになります。

トライアングルのアペックスを通る平行線まで値が戻ることもあります。その場合、アペックスを通る水平線を軸として上下対照のバタフライチャートが形成されることになり、大抵そのアペックスを通る水平線で跳ね返され再び下方へ値を掘っていきます。このことは、赤○でショートを持った後に価格がこれを少し上回ったからといって、緑〇の時点で下方トレンドが確定した以上、それほど心配する必要はないことも意味しています。

変形的なダブルボトム

次に、この逆パターンである、変形的なダブルボトムによるトレンド発生の否定を解説します。

ダブルトップの単純な反転ではない

9.5ダブルボトム9.8 ヘッドアンドショルダー・ボトムで述べたような、価格の重力を原因とする非対称性は、変形的ダブルボトムにおいても当てはまります。すなわち、変形的ダブルトップをそのまま上下反転したものではないことに注意が必要です。

変形的ダブルトップ成立の判断時期

図9を用いて説明します。トライアングル下辺のトレンドラインをブレイクしたものの一番目の谷底の安値更新に失敗し一旦の反発が見られたとします。しかし、多くの場合、かつてのサポートラインであった下辺が今度はレジスタンスに転じ、大なり小なりの抵抗にあうでしょう。しかし、その抵抗による下落が小さなものに収まり、すぐに再度の反発上昇をみせアペックス(頂点)付近をブレイクすれば、下降トレンドの否定が完成します。

この時、点線で囲まれた大小二つの円をみればわかるように、大きなダブルボトムと小さなヘッドアンドショルダー・ボトムによる二重の確認がなされていることに注意してください。つまり、それだけこのパターンの完成には時間がかかりますし、また再開後の上昇トレンドの角度もそれほど急激には上向きとはなりません。

トライアングル下辺の延長線がサポートラインとして機能したこと(緑〇)が確認されたことでひとまず下落が一段落したと判断し、さらにトライアングルの最初の山の頂点を通る平行線を突破できれば上昇トレンド転換の確定となります。

注意すべきは、トライアングルの最初の山の頂点を通る平行線付近で跳ね返された場合は、最初の山と谷との間を往復するレンジ相場へ以降することとなり、これは決して可能性として低くない点です。また、レンジ相場へ以降した場合、その後は必ずしも上方向へのブレイクの可能性が下方向にブレイクする可能性より高いわけではないことにも注意してください。この場合は一度フラットな視線に戻りましょう。また、レンジではなく再度のトライアングルを形成されるケースも観察されます。その場合でも同様です。

どこでエントリーするか

リアルタイムでのエントリー判断としては、トライアングルの下辺の延長線上にあたる赤○付近での反発を狙って行う方がよいでしょう。

ダブルトップの場合は、第一の山の頂点付近でショートエントリーすることにも合理性がありますが、ダブルボトム、特にこのような変形的なパターンの場合には、反発を確実に確認してからエントリーすべきです。価格には重力があり下方に向かいやすい傾向があり、一旦、トライアングルの最初の谷付近の価格帯で反発したかように見えたからといってすぐにダブルボトムの成立を予測するのは危険だからです。一見反発したように見えても、すぐに逆指値を巻き込んでそのまま大きく下落することも多いだけに慎重にいきましょう。大事なのは大きい利益をとることではありません。救出可能性の高いエントリーと小さくとも確実な利益こそが肝要です。

上に述べたように、並行レンジに移行する可能性が高いことも考え併せれば、無理にエントリーせず様子を見ても反対ではありません。

このように形成に時間がかかり狙える値幅もそれほど大きくはありませんが、それなりに出現頻度がありパターンとしての特徴が多く類似する形が少ないため見誤ることが少ない点で、高い有用性があります。

▷次項:9.12 トレンド反転機会としてのサポート・レジスタンス

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