9 トレンド判断

9.11 ダブルトップ、ダブルボトムによるトレンドの否定

トライアングルの保ち合いから一方向にブレイクしたものの、より大きな高値を更新できなかった結果、ブレイク方向へのトレンドが否定され、逆方向へのトレンドが発生する場合があります。これがダブルトップによるトレンドの否定です。

つまるところトレンドとは、高値・安値を更新する挑戦が連続して成功している動きです。高値を更新しない上昇トレンドなどありえませんし、安値を更新しない下降トレンドもありません。それに対しトレンドラインはその傾きの角度によってトレンドの強さを測るものでしかありません。とすれば、トレンドラインの突破よりも高値・安値が更新できるかの方がトレンドにとっては本質的事項となります。

トレンドは原則として継続します。それ故にブレイクの方向は、トライアングル発生以前のトレンドを引き継ぐ方向で生じる確率の方が高くなります。しかし、上に述べたように、トレンドにとっての本質は高値・安値を連続的に更新できるかです。したがって、トライアングル上辺・下辺のラインブレイクによるトレンドの発生はいわば仮とでもつけるべきものであり、次の重要な高値・安値を越えることができるかで鼎の軽重が問われることとなります。

そして、ダブルトップ・ダブルボトムは高値・安値の更新への挑戦に失敗した最も典型となるものですから、上辺・下辺のラインブレイクによるトレンド発生がフェイクであった場合にも、しばしば出現します。

図9をみると、丸の点線で囲われた部分にダブルトップが出現しています。これはトライアングル上辺をブレイクしたものの、上昇トレンドにとってより重要となる高値の更新に失敗したことにより発生します。単純にみると、第三の山、第二の山の頂点は越えていることから、一見高値の更新に成功しているように見えるかもしれません。しかし、これは誤りです。図9においてトライアングルによる保ち合いは上辺三点、下辺三点を結ぶ直線で構成されており、これらの点のうち第二の山と谷、第三の山と谷はそのトライアングルを構成する一部として機能しているにすぎず、トライアングルのラインをブレイクした今となっては、もはや重要な意義を持つものではありません。それはあくまでもトライアングルを構成するパーツとしての機能しか持たないものです。それに対し、最初の山の頂点は、数学的にも三角形を構成する同一直線上にはない三つの頂点の中の一点であり、またチャート的にもトライアングルというパターンにおいて最高値を示すものですから、重要な数値的意味を持ちます。これを更新できなかったことは、上昇トレンドがフェイクであったと評価するに十分なものであり、それゆえに下降トレンドへの転換パターンとして機能することとなります。

このパターンは頻出するだけなく、ダブルトップの考えを理解する上で重要なのでもう少し敷衍します。ダブルトップとは、極限まで抽象化すると、二つの天井です。この二つの天井がチャートの時間足で並んで表現されたのが典型的なダブルです。図9のケースは、単純に時間足の軌跡で描かれた天井が二つ並んでいるわけではなく、トライアングルの天井とラインブレイク後の波動の天井とが二つ並んでいる状態です。いわば、ある概念の天井と別の概念の天井とが仲良く並んでいるということです。

論を戻すと、高値の更新に失敗し下落していくチャートがトライアングルの下辺をブレイクした段階でダブルトップによるトレンドの否定が成立したと判断します。このブレイクは高い確率で最初の谷の水平線、つまりトライアングルの頂点の安値を更新します。これは上昇トレンドがフェイクだったことが判明した以上、買い目線のトレーダーが減少し、下落に勢いがつくためです。

では、リアルタイムのトレードにおいてはどこでエントリーするのかが問題となります。攻撃的なエントリーは、ラインブレイク後のチャートがトライアングルの高値更新に失敗することを予想し最初の山の頂点を通る水平線付近にショートの指値をおくことでしょうが、この判別はチャートのパターンではなく、上に控えるレジスタンスの強さによってなされます。単純にチャートだけみれば、上辺のトレンドラインを突破した以上、トライアングルの高値を更新して上昇トレンドが続く可能性も十分にあります。5節サポートとレジスタンスで述べたように、これらは少なくとも一度は機能するであろうことを前提に行動すべきですが、本ケースでは最初の山においてすでに作動しており、更新がなされるかは中立的判断が要求されます。チャートパターンではなくレジスタンス自体の強さを考え、自信があればここでショートを入れるのも面白いでしょう。突破され含み損になった場合でも、救出可能性はそれなりに高いと思います。或いは戻りをまってショートを入れても良いと思います。図9では上辺を結んだラインの延長線上をレジスタンスとしていますが、トライアングルのアペックスを通る平行線まで値が戻ることもあります。いわば、その水平線を軸に上下対照のバタフライチャートが形成されるわけですが、大抵そこで跳ね返され、下方へ値を掘っていきます。といっても、上辺の延長線とそれほど価格幅があるわけでもないので、エントリーは上辺から推測する値でかまいません。これに言及したのは、この上辺の延長線でポジションを持った後に、チャートがこれを少し上回ったからといって、それほど心配する必要はないということをお伝えしたかっただけです。

次に、この逆パターンである、ダブルボトムによるトレンド発生の否定を解説します。

ダブルボトム、ヘッドアンドショルダー・ボトムの節で述べたような価格の重力を原因とするチャートの非対称性は、ダブルボトムによるトレンドの否定においても当てはまります。すなわち、前節のダブルトップによるトレンドの否定をそのまま上下反転したものではないことに注意が必要です。

図10を用いて説明します。トライアングルの下辺のトレンドラインをブレイクしたものの、一番目の谷底の安値更新に失敗したチャートは、一旦の反発をみせます。しかし、かつてのサポートラインであった下辺がレジスタンスに転じ、ここで再度の下落を見せるもののすぐに再度の反発をみせ、アペックス付近をブレイクすることにより下降トレンドの否定が完成します。点線で囲まれた大小二つの円をみればわかるように、大きなダブルボトムと小さなヘッドアンドショルダー・ボトムによる二重の確認がなされていることに注意してください。それだけこのパターンの完成には時間がかかりますし、また、再開後の上昇トレンドの角度もそれほど上向きとはなりません。トライアングルの最初の山の頂点を通る平行線を突破できれば、上昇トレンド転換となりますが、仮にここで跳ね返された場合は、最初の山と谷との間を往復するレンジ相場へ以降することとなります。私のトレード記録に基づくと、むしろ確率としては、レンジに移行する可能性の方がやや高くなります。したがって、利益確定は保守的に、一番目の山の頂点を通る平行線の手前にて利益確定します。

なお、リアルタイムにおける判断としては、エントリーは確認としてのヘッドアンドショルダーの最後の谷付近で行います。下に強いレジスタンスがある場合でも既に最所の谷で機能しており、二度目も機能するかを事前に予測することは強い根拠が無いかぎり難しいと思います。前節のダブルトップによるトレンドの否定の場合はここでエントリーすることも一考の余地がありますが、本節のダブルボトムの場合は、価格には重力があることと確認のヘッドアンドショルダーの最後の谷でエントリーした場合に比べてそれほど値幅の違いが生じないことの二つの理由から、反発を確認してからエントリーすべきです。逆指値を巻き込んでそのまま大きく下に落ちてもおかしくないだけに慎重にいきましょう。大事なのは大きい利益をとることではありません。小さくとも確実な利益と救出可能性の高いエントリーこそが肝要です。

最初の山と谷との間を往復するレンジ相場へ以降した場合でも、必ずしも上へのブレイクの可能性が下にブレイクする可能性より極端に高いというわけではないことにも注意してください。一度フラットな視線に戻りましょう。また、レンジではなく再度のトライアングルを形成されるケースも観察されます。

形成に時間がかかりますし、狙える値幅もそれほど大きくはありませんが、それなりに出現頻度があり、パターンとしての特徴が多く類似するチャートパターンが少ないため見誤ることが少ない点で、高い有用性があります。

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