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9.12 転換点-ヘッドアンドショルダー、ヘッドアンドショルダー・ボトムによるトレンドの確認

ヘッドアンドショルダー(以下H&S)とヘッドアンドショルダー・ボトム(以下H&Sボトム)とは、通常、トレンドの転換時に発生する現象です。しかし、転換ではなくトレンドの確認の機能を果たす場合に出現する場合があります。これは、H&S・H&Sボトムが、それだけ信頼性の高いテクニカルサインの一つであることの証左でもあります。

上昇トレンドの途中に出現する、トレンド確認型のヘッドアンドショルダー・ボトム

図7をみると、上昇トレンドの途中において、点線の丸で囲った部分にH&Sボトムのパターンが出現していることが観察されます。このパターンをより深く理解するために、ブリッシュペイントと比較してみます。両者とも上昇トレンドの途中にトレンドと逆の傾きが出現しますが、その意味するところが異なることに注意しましょう。

トレンド確認型のH&S

図7のトレンド確認型のH&Sは、直前に比較的強い上昇波があり、それがなんらかのレジスタンスに衝突し跳ね返され、第一・第二の谷の形成中に利益確定の売りに加え新規のショートが多少でている場合に出現します。すなわち、前の上昇波をエラーと考えるなり、ぶつかったレジスタンスに高い信頼性を置くなり、何らかの理由によりこの価格帯は高すぎるのでショートを打とうと考えそれを実行した人が一定数いるということです。第二の谷の形成においては直前の谷を更新したものの、新規の買いやショートカバーがそれを上回り、最後の谷の形成で再度下値が硬いことが確認され、上昇トレンドが再開された結果としてのチャートです。

通常のH&Sボトムとの違いは、ネックライン突破時にも必ずしも特異な出来高の増加があるわけではないことです。この確認型のH&Sボトムは、トレンドの転換という巨大なエネルギーを必要とするものではなく、あくまで従来のトレンドに対するテストとしての機能しか持たないからです。

ブリッシュペイント

それに対しブリッシュペイントは、直前に強力な上昇波があり、なんらかのレジスタンスに衝突しやや跳ね返されたものの、ロングの利益確定の売りがなされるのみで新規のショートは入らず、一段落した段階で再び強力な上昇トレンドが再開される動きです。再度の上昇波が発生するまでは様子見の参加者が多いことから、この間の出来高は著しく減少します。その一方で、再開後の上昇波、特にトレンドライン突破時には極めて大きな出来高が再び出現します。

図7の方が最後の谷が浅いことからより強いように感じるかもしれませんが、上昇トレンドの継続を示すテクニカルサインとしてより強力なのはブリッシュペイントであることに注意してください。そのため、図7の場合は戻しが入ることが多くなるのに対し、ブリッシュペイントの場合は上昇再開後は直線的に鋭く上がっていくケースが多くなります。よって、上値の利益確定も図7の方がより保守的にすべきこととなります。

リアルタイムでどう判断していくか

リアルタイムでの思考としては、成立の予測の区別は難しいものではありません。直前の上昇波がブリッシュペイントの場合は極めて強力であるのに対し、トレンド確認型のH&Sの場合はそれ以前より比較的強い陽線にとどまるからです。またブリッシュペイントの場合はペイント描画中は出来高が著しく減るのに対し、図7の場合はそのような現象は生じません。

ブリッシュペイントの場合は、出来高を伴った急進的で鋭い上昇波(ペイント描画前の最初の上昇波)が観察され、下向きの傾きを持つ並行チャネルがひけるようになった時点で、その可能性が濃厚だと判断します。そこでラインを予想して指値を起きます。指値が刺さった後は、最初の上昇波と同じ値幅を最低限の目標値とし、勢いが続くようなら更に利益を伸ばすことも視野にいれます。

一方、トレンド確認型H&S場合は、三番目の浅い谷を起点としてネックラインを突破した時点で、トレンド確認のH&Sボトムが成立したと判断し上昇トレンドの再開を察知します。このパターンは多くの場合一旦の戻りが生じるので、そこを狙ってエントリーする流れになります。ブリッシュペイントより弱いサインのため、欲張らず早めの利益確定が基本となります。

注意すべきは、このパターンが巨大なヘッドアンドショルダーの構成要素の一部となる場合があることです。つまり、最初の上昇波を左の山、再開後の上昇波を中央の山として大きなH&Sを形成することも多いので、その点からも、最初の上昇波の頂点を通る平行線あたりに置かれたロスカットを連鎖的に巻き込み更なる伸びを見せた時点で、欲張らず利益確定することを推奨します。

下降トレンドの途中に出現する、トレンド確認型のヘッドアンドショルダー

トレンド確認型のH&Sボトム

図8は、下降トレンドの途中に出現するトレンド確認型のH&Sが丸の点線で囲まれた部分に出現しています。この場合も戻りを待ってショートを入れることができますが、同じく早めの利益確定が基本となります。このトレンド確認型の場合は、トレンド転換型の場合と異なり、H&SとH&Sボトムとはそれぞれ上下反転したものであるという理解でそれほど問題はありません。

トレンド確認型H&S・H&Sボトムとペイントとの違い

むしろ大切なのは、図7・図8のトレンド確認型H&S・H&Sボトムとブリッシュペイント・ベアリッシュペイントとの違いです。

確認型H&S・H&Sボトムは、ややトレンドに対する懐疑が生じつつもそれを否定したことを表しており、それに対しブリッシュペイント・ベアリッシュペイントは、いわばトレンドの小休止であり最初の上昇波も再開後の上昇波も極めて強力です。

特に前者においてはトレンドは継続するものの疑心を抱く参加者が出始めていることに注意し、もしこの時点で自分が強気な相場観を持っていたとしたら、少し慎重に再検討してみるべきでしょう。

▷次節:9.11 変形的なダブルトップ、ダブルボトムによるトレンドの否定

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