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9 トレンド判断

9.8 ヘッドアンドショルダー・ボトム

ヘッドアンドショルダー(以下H&S)とヘッドアンドショルダー・ボトム(以下H&Sボトム)との関係は、9章5節で述べたダブルトップとダブルボトムとの関係とほぼ同じです。単純に上下が反転したものと考えるのではなく、価格には重力があるという前提から導かれる違いを抑えておくことが重要となります。5節のダブルボトムで述べたように、最大のポイントは出来高です。もちろんH&Sにおいても出来高は重要な指標となりますが、その判断の仕方が大きく異なります。H&Sの場合は、あくまでもある上昇トレンドからヘッドアンドショルダー形成までの範囲内での相対的な出来高の推移が問題になるのに対し、H&Sボトムの場合は絶対量としての出来高が不可欠です。この点は重要なので図を再掲して詳しく説明します。

H&Sの場合、最初の山(r)よりも中央の山(t)付近での出来高が相対的に小さく、さらに最後の山(v)付近での出来高は一層小さくなります。また中央の山からの下降波(t-u)と最後の山からの下降波(v-w)の出来高は、中央の山に向かう上昇波(s-t)と最後の山に向かう上昇波(u-v)よりも相対的に大きくなるのが特徴です。最後の山からのネックラインブレイク(w)に向けての下降波(v-z)は顕著に出来高が増えますが、H&S全体における絶対量としての出来高は、それまでの上昇トレンド全体の中では相対的に小さいのが通常です。「相対的」という言葉を敢えて繰り返し用いましたが、H&Sの場合はこのように、上昇波と下降波との比較や、山の頂点付近での比較、H&S以前から続くトレンド全体とH&S部分との比較など、出来高の相対性が問題となります。したがって、ある種の繊細さをもって丁寧に事実を拾うことが必要となります。ヘッドアンドショルダーの成立条件を解説している。

これに対し、H&Sボトムの場合は、絶対量としての出来高が不可欠です。H&Sボトム形成前から続く下降トレンドと比較して明らかに大きな出来高が必要なだけでなく、そのマーケットの平均的な出来高よりも大きい、つまり絶対量が大きいことが必要です。場合によっては、過去数ヶ月分のチャートを参照し、大きな価格反発が起こった場合と同じ程度の出来高かどうかを把握して比較する必要があります。さらに、H&Sボトムの中での上昇波と下降波のどちらにも大きな出来高が基本的に伴います。つまりH&Sボトム全体を通して激しい売買が生じるのが通常です。とりわけ、ネックライン突破時(ネ-ハ)と、ゆり戻しからの再度の上昇時(ヒ-終点)においては、連続的で大きく激しい歩み値の更新が続くのが特徴です。その他、ショートの大口による利益確定による一時的な反発を上昇トレンドへの転換と勘違いしないように注意する点もダブルボトムと同じです。10分足基準を遵守し、1分足や5分足での突発的な買いに右往左往してはなりません。また、H&SよりもH&Sボトムの方が発生が稀である点も共通します。

最後に、ネックラインについて説明しておきます。H&Sでも述べましたが、通説は、二つの戻しを結んだ線(ナ-ヌの延長線)をネックラインと定義しますし、このブレイクをもってH&Sボトムの完成として問題ありません。ただ、いち早くH&Sボトムの成立可能性を察知するために、ツ-ナの延長線をあらかじめ引いておき、大きな出来高を伴いつつこの延長線への接触(ヌ)まで価格が上がれば、この時点でH&Sボトムの可能性を考え、トを通る平行線付近(ネ)で反発が起こらないかに意識を集中してチャートと歩み値を観察すべきです。また、ネックライン突破後の下方向への戻し(ハ-ヒ)の始点は、このツ-ナの延長線と平行且つテを通る直線との接触(ハ)によって起こる傾向があります。そして、ゆり戻しからの再度の上昇(ハを基点とする上昇波)はネックラインのみならず、中央と最後の谷を結ぶ直線(ニ-ネの延長線)上で反発することもあり、このネックラインとトレンドラインが交差する点(ヒ)は、この反発の最有力候補となります。

次節では、両者のエントリーポイントの違いについて説明しますが、考え方はダブルトップとダブルボトムとの関係とほぼ同じなので理解は難しくないと思います。

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