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9.7 転換点-ダブルボトム

ダブルボトムは、形としてはダブルトップ(参照:9.4 ダブルトップ) を逆にしたものですから、共通する性質が多くあります。ただし、ただ単純にダブルトッブを上下反転したもの、という理解では不十分です。本節においては、ダブルボトムに特有の性質を論じます。換言すれば、その他の点においてはダブルトップの反転的な理解で問題ありません。

ダブルボトムの成立には出来高が重要

ダブルボトムから上昇トレンドへの転換と判断する際に最も重要な指標は出来高です。ダブルトップから下降トレンドへの転換についても出来高は重要な指標ですが、ダブルトップで問題になるのはその周辺部における狭い範囲内での相対的な出来高の変化です(参照:9.4 ダブルトップ)  それに対して、ダブルボトムから上昇トレンドへの転換に際しては、絶対的な出来高の増大による裏付けが不可欠です。たとえダブルボトムと相似した価格の軌跡がチャートに出現したとしても、出来高の顕著な回復が伴っていない場合、反転パターンとは無関係である可能性が高いことには注意が必要です。

特に株式とビットコインにいえますが、価格には重力というべきものがあります。ファンダメンタルやテクニカルが真空状態であるならば、価格は落ちていく傾向があるということです。もちろん株式会社、そしておそらくは暗号資産も、総合的・長期的にみれば時間の経過とともにファンダメンタルの肉付けがなされ右肩上がりに成長していく性質があります。しかし、デイトレードを中心とする短期トレードにおいては、より大きな注意をこの重力に対して払わなくてはなりません。なんとなく散歩していたら、ある日エベレストの頂上にいたということが有り得ないように、なんとなく上昇トレンドに転じることは基本的にありません。エベレストに登頂したいという強い熱意とエネルギー、すなわちマーケットにおいて熱気に相当する出来高が上昇トレンドへの転換には必要です。

これはいわゆる値頃感トレードに対する警告でもあります。重力がある以上、なんとなくここ最近の価格帯の中で安く感じるからといって安易にエントリーしてはなりません。更にいえば、何となく高く感じるから売ってみる以上に、なんとなく安く感じるから買ってみる方が、重力がある分、危険性はより高くなります。

出来高を伴わない下落トレンドから上昇トレンドへの転換は稀であるということは、逆のパターンと比較して発生条件が厳しいことを意味します。端的にいえば、ダブルボトムの方がダブルトップより発生確率は低いことになります。また、出来高を必要とするゆえに、形成には時間がかかります。つまり、ダブルトップは比較的短い時間足でもサインの有効性があるのに対し、ダブルボトムにおいては短い時間足で類似する形が出現したとしてもその信頼性は相対的に低くなります

以上のように、ダブルボトムには出来高に顕著な特徴があります。このようなダブルボトムの特性をより深く理解するために、逆に出来高を伴わない上昇にはどのようなケースがあるかを把握しておきましょう

出来高を伴わない上昇

ショートの利益確定

出来高を伴っていない反転でまず考えられるのは、ショート勢の一部が利益確定の買いを入れたために価格が一時的に反転したケースです。これは大抵なんらかのサポート付近でなされるので、その点からも反転サインだと誤解しやすく注意が必要です。何らかの強烈なファンダメンタルズの裏付けがありショートの大口の買戻しが大量に入った場合は強烈な出来高の回復とともにトレンドの大転換が生じますが、短期の時間足上で一見ダブルボトムのような形が出現したとしてもそれが出来高の回復を伴っていなければ、レジスタンスライン付近で利益確定なり損切りなりショートのポジションを解消する動きにすぎず、それが収まれば再び下落トレンドが再開される可能性が高いといえます。ダブルボトムらしき形が出現したからといってすぐに飛びつかず、ショートの決済の可能性があることを常に意識しておくことが重要です。

ショートの利益確定にすぎない動きをトレンドの反転と間違って判断しないための対策としては、下落トレンドからの反転を判断するには、上昇トレンドの反転を判断するよりも、より大きな時間足を用いて慎重に行うことです。このようなショートの決済によるエラーサインは短い時間内に吸収・消化されるのが通常だからです。言い換えれば、1分や5分の短期足でサポート付近における顕著な反発があったからといって、即座に反転のサインだと判断してはならないということです。それゆえ、デイトレードにおける逆張り戦術は、上昇トレンドに対する逆張りの方が、下降トレンドに対する逆張りよりもエントリーの機会が多くなり優位性があります。

ファンダメンタルズの裏付け

また、ファンダメンタルの裏づけがある強烈な上昇の場合も出来高を伴わず一方的に上昇していくケースがあることを押さえておきましょう。つまり、ロングポジションを持つトレーダーの多くが短期に決済する必要を感じておらず更に利を伸ばそうと考えており、売りがほとんど出ない場合です。この現象は、特に値幅制限のある株式においてはしばしば生じます。一番分かりやすいのは、浮動株の少ない銘柄にてインパクトのある材料がIRで発表され、連日のストップ高が続くようなケースです。このような場合に、価格の上昇に対する出来高の低さをもってトレンドをフェイクだと判断することはできません。もちろん、仕手筋による上げの可能性や行き過ぎた狂乱的上昇の可能性など、別の根拠でフェイクトレンドである可能性を検討する必要はありますが、少なくとも出来高の少なさをもっては真贋を判断できません。このようなケースでは、安易に逆張りしないようにしましょう。

以上、ダブルトップとダブルボトムとの特性とその違いについて説明してきました。次節では、この両者の特性から導かれるエントリーポイントの違いについて解説します。

▷次節:9.6 ダブルトップとダブルボトムのエントリーポイント

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