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3 利小損大

3.2 利小損大の本質的意義

「利小損大」を基本戦略として採用する以上、その意義を一歩踏み込んで解説したいと思います。まず注意すべきなのは、「ポジションを取り含み損・含み益が発生した場合に、小さい利益でもすぐに利益確定する一方で含み損は同値撤退まで耐える」という行動を取ることを全てのトレードにおいて強制するものではないということです。

先にも述べましたが、マーケットにおける思考は現実の直接的経験から知を創り出す帰納法であるべきです。「利小損大」という定理を金科玉条として、現実の値動きがいかにあろうと常に利がでたらすぐに利益確定し、損が出てもしばらくは耐えるという行動フォーマットを当てはめることを意味しません。これはあくまでも利小損大の戦略から演繹的に導かれる行動の一つの現れであって、本質ではありません。ザラバを眺めていて、ポジションを取った瞬間に違和感を感じ即決済することもありますし、トレンドが明確に感じられるときは建値に逆指値を入れた上なんらかの目標値まで到達するまで放置することはあります。

では、私のいう「利大損小」とは何を本質とするものか。これに答えるには、まずそもそもなぜ投資において損切りが重要を考える必要があります。実際、一旦とった建値を二度とつけないという事体は、そう発生するものではありません。いわゆる天井掴み・底売りの場合であっても、二度とその値段をつけない事態が起こるのはある種歴史的場面といえ、通常のトレードにおいては大体において値段が戻る場面は生じます。つまり含み損のポジションは現物取引であればかなり高い確率で助かります。ところが、高いレバレッジ故に耐えられない場面が生じそれゆえ一回で全ての利益、場合によっては原資までも失う可能性があること、また時間的に場合によっては数十年単位の間隔が生じることもあることから、その期間を無為に過ごすよりは一旦損切り新たなポジションを構築する方が遥かに生産性が高いという点に損切の意義はあります。しかし繰り返しますが、建値を二度とつけないという可能性は非常に低い以上、頻繁な損切りは利潤の効率性を著しく低下させます。

私が定義する「利小損大」は、判断が求められる局面において、大きな利益を獲得できる期待可能性よりも損失を生じさせない期待可能性に価値の重きをおくという意味です。この本質的価値観の具現化として、ある種の違和感を感じた場面において、含み益が一定程度でているのであれば逆指値を建値にいれる、一定の含み損が発生したらすかさず建値に決済を入れて同値撤退を狙う、もしくはエントリーを分割し平均取得単価を下げる余地を残すといった行動が導かれるのです。最後のものはいわゆる難平であり一般に悪手とされます。しかし、「利大損小」が肌に合わないという自分の個性特徴から考えると、難平は忌避すべきものではなく、心理的平衡を保ち認知の歪みを防ぐという点で意味のあるものとなります。自分の特質と合致しない戦略は統合性を失いがちとなり、かなり高い確率で破綻へと向かいます。

ただ、かように損切の発生を極力忌避する売買行動をとっていても、一年に何度かは大きな損切を決断しなければならない場面は訪れます。従って、どのような場面になった場合に、損切を実行するかについては、チャートの動きの面からの必要性と損失の絶対的価額の許容性とから明確にルール化しておく必要があります。ただ、具体的なルール化の前に、損切りといういわば本能に逆らう行動をとることができるようにする心理状態を自分自身の心にセットしておかなければなりません。4章ではその点を導入として解説していきます。そして4章に進む前に、3.3 利小損大の戦略的優位において、改めてその戦略的内容と優位性について述べておきます。

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