4.6 損切りから逆算したエントリーまでの思考プロセスの典型モデル

実際に損切りから逆算したトレードモデルを考える前に、そのエントリーに至るまでの思考プロセスをモデル化しておきます。これは、いわば目次のように、戦略論全体の中でどの章がどの位置づけになるかを分かりやすく提示する役割も果たします。

エントリー以前の思考プロセス

トレンド判断

トレンド判断

長期のトレンド:トレンドライン=日足を基本

短期のトレンド:トレンドライン=1時間足を基本

リアルタイムのトレンド:移動平均線=2日間(15分足192本SMA)を基本

これらのトレンド判断を前提に、転換点を探し、損切りラインを明確にした上でトレードをしていことになります。全てのトレンド判断の方向性が一致すれば完全条件ですが、欠ければ不完全条件下における執行になります。また、移動平均線に基づくトレード典型モデル(参照:)を用いる場合は、先にここで適用させた上でエントリーの思考プロセスの典型モデルも適用させます。

エントリーの思考プロセスの典型モデル

エントリーの思考プロセス

エントリーの思考プロセス

⓪ファンダメンタル要因に注意を払い、マーケット全体の地合いを観察します(10章以降~)

①チャートの状態を読み取りトレンドの転換点を発見します(9章 トレンド判断)

②強固なサポート・レジスタンスラインを探し、最も信頼性が高いと思われるところにテクニカル上の損切りラインを設定(4章 損切り5章 サポートとレジスタンス)し、その上で損切りラインから適用できる典型モデルを選択します(4.6 損切りから逆算したトレードの典型モデル) 。

④仮にポジションが逆行し、テクニカル上の損切りラインを割った場合の損失を許容最大損失価額の範囲内に収めるように逆算し、そのトレードにおける最大ポジションサイズを算出します(4.7 損失の許容絶対額)

⑤そのポジションを持った場合に、またそのエントリーポイントで入った場合に、救出可能性が高いかを検討します (4.8 損切りモデルから逆算したエントリーの最終基準)

認知バイアスが排除されている場面かを確認します(6章 認知バイアスの排除)

不完全条件の場合は、ポジションサイズを大幅に減らし事前に対応を準備しておきます(7章 不完全条件下での執行)

⑧実際にエントリーします。

⓪は場合によっては完全にテクニカル判断だけに基づいてエントリーすることもありますので番号としては零をふっています。ただし株式の場合は、必ず全体の指数と参照しながら考えます。

モデル化の意味

もちろんこれらは利便性のためのモデル化にすぎず、実際には同時並行的に各段階の思考が行き交いながら最終的なエントリーを決断します。例えば、①と②は実際の思考プロセスでは入れ替わる場合もあります。すなわち、②強固なサポート・レジスタンスを発見しこれを背にトレードできないかと考えた後に、①チャートを注視して転換点が発生するのを待つ、といった流れも成立します。

ただ、最も典型的・理想的にはどのような思考プロセスになるかをモデル化しておくことは極めて必要です。脳に行動パターンとして刷り込み習慣化させるためには、言語化し可視化して明確に意識しておかなければならないからです。

単に損切りしようと思うだけでは、損切りができるようにはなりません。それはただ単に損切りをしなければいけないこと知っているだけです。「またやってしまった」「次こそは損切りしよう」と思うことを繰り返すだけでは意味が全くありません。文字通り、脳に刷り込むのです。そのためのモデル化です。

エントリーは必ず損切り概念の洗礼を経なければならない

重要な点は、②③④を通じて、トレードを決断する思考のプロセスの中心において必ず損切りの概念の洗礼を浴びさせることです。

逆に、最悪なトレードとはどういったものか分かりやすく例を示せば、⓪→⑨へと飛ぶトレード、すなわちファンダメンタル要因から雰囲気でエントリーする場合、或いは①→⑨へと飛ぶトレード、すなわちチャートの転換サインを発見したからと何も考えずにその方向ですぐにエントリーする場合、などがこれに当たります。繰り返し述べていますが、人間はポジションを持つと馬鹿になります。よって、ポジションを持ってから損切りラインを考えても、それは馬鹿が考える損切りラインです。

それでは次節にて、具体的な典型モデルの作成に入っていきます。

▷次節:4.6 損切りから逆算したトレードの典型モデル

 

-4 損切り