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9.15 転換点-トレンドの重要局面で観察される現象~周期変動の対数周期性

トレンドには周期性があります。この性質をうまく利用し、トレンドの転換点やレジスタンスラインのブレイクポイントなどの極点いつ発生するかのタイミングを適切に捉えることができれば、トレードにおける判断優位性が高まります。そこで、これらの極点ではどのような現象が生じているのかを解説します。

トレンドの極点では何が起こっているか

周期変動のサイクルが短くなる

図1はチャートではなく、ある現象が発生する周期性を抽象的にイメージとして示したものです。トレンドの転換点ブレイクポイントなどの極点における注目すべき前兆現象は、周期変動のサイクルが対数周期的に短くなっていくことです。たとえば、最初の山と谷は10分で形成され、次の山と谷は5分で形成、最後は2分30秒で形成といったように、波動が敏感になっていきます。それに伴って、価格の動きも小さくなっていきます。それが限界に達したときに、チャートに大きな動きが発生します。

トライアングルをイメージすると分かりやすい

この現象が観察される一番わかりやすい例としては、トライアングルがあります。シンメトリカル、アセンディング、ディセンディングのいずれの三角形おいてもこの現象は観察されます。周期変動の対数周期性は、トレンドの時的発生点を予測するものにすぎず、トレンドの方向性に影響を与えるものではありません9.2 トレンド継続性の原則で述べたようにトレンドは原則として継続しますので、アセンディングもディセンディングも再び以前のトレンドを引き継いでそれぞれ上昇・下降していきます。

ディセンディングトライアングルを例に、より具体的にみていきましょう。例えばショートポジションを持っており、下落チャートがレジスタンスラインにさしかかったケースを考えます。このとき、レジスタンスが1時間足を基準としたものであった場合、より短い時間足の10分足・5分足・1分足などを観察し、この周期変動の対数周期性を伴う動きが生じていないかを観察しましょう。周期変動の対数周期性が観察されそれがまだ臨界点に達していなければ、たとえブレイクを否定する方向へ小刻みな反発が生じたとしてもその反発はエラーの可能性が高いとして無視する判断ができるようになり、慌ててポジションを決済してしまうことを避けることができます。

周期性が臨界点を迎えそうだと判断するためには、少なくとも3回の短縮が生じていることを目安とすべきです。つまり、直前に生じた動きを繰り返すような動きが再び生じており、その二度目の動きが一度目の動きを形成するのにかかった時間よりも短い時間で形成された時点で、周期変動が臨界点に達しつつある可能性を考慮し、これ以降の動きだけをトレンド判断の材料とすればよいことになります。こうすることで、レジスタンス付近で生じる小刻みな価格の動きに動揺せずに、落ち着いて判断できるようになります。すなわち、わずかな反発に動揺しポジションを切ったところその後ブレイクが生じ、やっぱり切らずに持っておけば良かったと嘆く事態に陥ることをある程度抑えられます。

重要局面でよく観察されこのような周期変動の対数周期性に注目することによりトレンドの時的発生点をとらえ、時間的にも心理的にも余裕のある取引ができるようになります。

重要な局面には周期性があることが多い

トライアングルだけにこの現象が観察されるのであれば、単にチャートのパターン認識だけで足りるのですが、問題は、この現象は、時間足の大小を問わず、また形を柔軟に変形させて、重要な局面でばしば登場する点です。対数周期性を伴った周期変動は、トレンドの重要局面で観察される現象として唯一ではありませんが、最も典型的なものです。

周期性による裏付け

逆にいえば、自分がある見立てをマーケットに対して持っているときに、その見立てによれば重要となるであろう局面にチャートの価格が迫ってきたにもかかわらず、下位の時間足において特に何の特徴もない均一のサイクルの波動しか生じていないのであれば、その見立ては間違っている可能性があります。そのような平凡な波動により何となくトレンドが発生したり転換したりすることはあまりないからです。もちろん全くないわけではありませんが、確率的優位性がある以上、自分の当初の見立てに拘泥せずに別の可能性を考える柔軟性を忘れないようにしましょう。

周期性への警戒

逆に、何事もないような平凡なポイントに見えても、より大きな時間軸でみた場合に何らかの周期性に当てはまる場合には、何かしらの動きが起こるかもしれないという警戒感を持つべきです。

いつも周期性があるわけではないが

もちろん、このようなサイクル自体を生じる間もなく、要人発言であったり突発的な事件であったり、あるいはもっと小さいレベルでも一気に逆指値を狩ってきたり買い支えや売り押さえが起こったりして、価格が一方的に動くこともあります。その場合、チャートの動きが自分のポジションに合致すれば期せずして短時間で大きな利益が獲得できますが、逆方向に動き悔しい思いをすることもあります。しかし、長期試行性の下では確率的優位性のある判断の連続が勝利への鍵となります。一喜一憂せず、明確な判断基準を持ちそれを実行することで一つ一つのトレードを高質なものとすることが大切です。

▷次節:9.15 トレンドの継続をいかに確認し捕捉していくか

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