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9 トレンド判断

9.9 ヘッドアンドショルダーとヘッドアンドショルダー・ボトムのエントリーポイント

この論点も、ダブルトップ・ダブルボトムと関係を同じくします。ヘッドアンドショルダー(以下H&S)の場合は、成立を予測して事前にエントリーするのに対し、ヘッドアンドショルダー・ボトム(以下H&Sボトム)の場合は、成立を確認した後にエントリーします。発生確率についてH&Sボトムの方がH&Sよりも低いこと、ネックライン突破後のゆり戻しが生じる確率についてH&Sボトムの方がH&Sよりも高いことがその理由です。このあたりの詳しい解説は9.6 ダブルトップとダブルボトムのエントリーポイントを参照ください。H&S・H&Sボトムは、ダブルトップ・ダブルボトムと比較してチャートの形状が複雑な分、判断の難易度は高くなります。後からチャートを振り返って、ここがヘッドアンドショルダーだったんだなあ、ここでエントリーすればよかったなあ、と感想を述べるだけでは意味がありません。リアルタイムに描画されていくチャートのどの段階でH&S・H&Sボトム形成の可能性を考慮にいれ、実際にエントリーするのかを、丁寧に見ていきたいと思います。

ヘッドアンドショルダーのエントリーポイントについて解説しているまずH&Sから説明します。ここで注目すべきはq-r波の強さです。始点-p波と比較して値幅も出来高も大きい今までとは明らかに異質な上昇波が出現しました。このような非常に強力な上昇波(q-r)が観察され、その直近上部に何らかのレジスタンスがあり、それを受けての戻しが入り(r-s)、その後の再上昇(s-t)が起きたものの出来高が小さく形成の速度も速くこじんまりとしている。このような状況がみてとれたら、H&Sの可能性を考慮します。ダブルトップの場合は、この戻しの谷(s)が直前の山の頂点(p)を通る平行線よりも下回ることが多いのに対し、H&Sの場合は依然として上回るケースが多いことにも留意しましょう。言い換えれば、ここでsがpを通る平行線を下回れば、H&Sではなくダブルトップの可能性をより重視します。

次に、s-t波がrを通る平行線と同じ高さまできた時点で、歩み値や出来高に意識を向けて観察します。あまり新規の買いが入らず逆指値が連鎖的に決済されている様子が歩み値からみてとれる、pを通る平行線とrを通る平行線の値幅よりも明らかに小さな値幅でしか山が形成されていない、r付近よりもt付近の出来高の方が小さい、s-t波の出来高が始点-p波やq-r波より相対的に小さい、t-u波の出来高がs-t波の出来高より相対的に大きい、q-sを通るトレンドラインがt-u波によってブレイクされた、などの様子が見て取れれば、H&S形成の可能性がかなり濃いと判断し、エントリーを決心し、rの平行線上にvを予測して売り指値をおきます。

uで反発しつつもu-v波の出来高がさらに細っているのを確認し、そのままv付近に置いた指値が刺さったとします。その場合は、次にネックラインのwが割れるかに注目します。v-w波において出来高と歩み値から新規の売りが多く入っている様子が観察され突破の可能性が高いと判断したらそのままホールド、そうでなければ即座に逆指値を入れて同値撤退、v付近からそのまま上がっていき含み損になったら利小損大の観点からホールドの極限として損切り典型モデルを使用することを前提に原則そのままホールドしつつ同値撤退の逆指値を注文、明らかに間違いであったと判断すれば直前の高値のt付近にロスカットラインを設置、という選択肢が基本となります。

利益確定は、中央の山の頂点(t)からネックライン(w)までの値幅を垂直に計算し、そのpips分をネックライン(w)を始点として下に引いた直線の終点が最低限の目安になります。一番簡易かつ明確なのは、始点から中央の山の頂点(t)の高さを垂直に測り、フィボナッチ・リトレースメントを用いて、32.8%のラインを目標値とする方法です。いずれにせよ利小損大の戦略下では確実な利益確定を優先し、たとえネックラインを割ったとしても、同値撤退はできるよう建値と同値で逆指値を入れておく作業を怠ってはなりません。突発的な要人発言など、相場が急変し、再度の上昇が突発的に始まる可能性はいつでも考慮しておきましょう。

次にH&Sボトムの場合を説明します。ここでも思考の導線となるのは、出来高が伴った値幅の大きい下降波(テ-ト波)が出現することです。前節の繰り返しとなりますが、この導線部分に限らず、H&Sボトムでは出来高が重要となります。そして、H&Sボトム形成の出来高の大きさには、絶対量が求められます。現在の下降トレンドの中での相対的な量が多いというだけでは不十分であることには注意してください。単にチャートの形がH&Sボトムに相似しているからというだけの理由で判断してはなりません。これは、出来高が一次的指標であり、チャートの形が二次的指標であると言い換えることもできます。これはH&Sとの最大の違いであり、H&Sの場合はチャートの形が一次指標、出来高はそれを裏付ける二次指標であることと大きく異なります。

H&Sボトムの場合は、ネックラインの突破(ノ)後のゆり戻し(ハ-ヒ)にてエントリーするので、チャートを予測する必要性はH&Sと比較して低くなります。その分、出来高が伴っているか、特にテ-トの下降波とネ-ハ波において、今までの下降トレンドと比較して出来高が大きいというだけでなく、最低でもその当日、場合によっては数ヶ月以内のチャート全体を俯瞰し、その時間足における特異な出来高の増加があるかを第一の判断サインとしてください。

そして、成立確率の低さと戻しが入る可能性の高さを考慮し、底(ト、ニ、ネ)を狙うのではなく一旦の戻しの後(ヒ)でエントリーするようにすれば、大きな失敗は殆どなくなるはずです。

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