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5.3 サポート・レジスタンスと逆指値との関係

サポートの僅かに下・レジスタンスの僅かに上の価格帯には、時として大量の逆指値注文が置かれます。この逆指値が狩られた時に、価格が極端な動きを見せることがあります。

逆指値を意識していないと空回る

投資において利益が出せない方から、よくこういう相談を受けます。いわく「上昇の勢いがあると思って買ったら下がるし、下落の勢いがあると思って売ったら上がる。しょうがないので含み損に耐えていたら、ポジションがロスカットされた途端に反発する。反省して今後は押し目で買おうと思ったら、今度は押し目なんかつけなんで一方的に上がっていってチャンスを逃した。まるで自分のポジションが監視されているかのようだ。どうしたらいいか分からない。」といったものです。

このようなトレードが多い方は、逆指値に対する理解が不足していることが多いように思えます。チャートの値動きしかみておらず、その意味するところ、特に、そのチャートの動きが、新規の玉が入ったことによるのかそれとも逆指値注文が連鎖的に決済されていることによるのかの区別がついていないのです。この点につきまず説明します。

逆指値

トレンド推進の補助力として働く

こういうと、「逆指値を狩る動き」とは何か特殊で例外的な状況のように思われるかもしれません。しかし、この動きは、小さいレベルでは日常的に生じています。それはトレンドの発生時です。トレンドの発生は新規の売買がなされるからこそ生じますが、連続的な逆指値狩りが行われることにより補助的にトレンドの進行を助けます。どういうことか説明しましょう。

通常、トレンドは直線ではなく波動の形をとります。波動は、高値あるいは安値の連続的な更新に成功していくことで形成されます。この時、直前の波の高値・安値は、テクニカル的に最も手近なレジスタンスです。この波の山あるいは谷の部分には、そこでポジションをとったトレーダーの一部が、僅かな利益を背にして逆指値注文を出しています。

例えば、山の頂点でショートをとったトレーダーは即座に僅かな含み益が生じているわけですが、天井からを狙ってショートポジションを持ってみたもののトレンドに逆らった事実を強く警戒し、素早く撤退ができるように建値付近に買いの逆指値を入れる者が一定数います。もちろん山の頂点でロングをとったトレーダーもおり、彼らは即座に含み損が生じています。

しかし、ロング勢で建値付近に撤退の売り指値を入れる者は、ショート勢で撤退の買い逆指値を入れる者よりは少ないのが通常です。なぜなら、山の頂点付近でのロング勢は、現在の上昇トレンドが続くと考えているからこそロングポジションをとったのであり、買ったタイミングこそ後悔しているものの、ロングポジションをとったこと自体を悔いてはいないからです。

それに対して、山の頂点付近でのショート勢は、僅かな含み益こそ出ているものの、天井狙いで敢えてトレンドに逆らった売買をしており、極短い時間でそれが含み損に転換する危険性を強く警戒しています。

このような事情から、山の頂上付近にはショート勢の買い逆指値の方がロング勢の売り指値よりも多く偏在することになります。そして、一旦は押し目の谷を形成した波動は、新規の買いが入ることによって再び上昇に転じます。この時、ショート勢のうちで逃げ足の早い者は、その上昇に転じた状況を見て危険性が現実化したと判断し決済の買いを入れて微益で撤退する者が出てきます。新規の買いに加えこのような微益撤退の買いも入ることで上昇波に勢いがつきます。そして、この上昇波が山の頂上まで到達すると、ショート勢の出していた買いの逆指値注文が連鎖的に狩りあげられて、チャートは高値を更新していくわけです。

逆指値が狩られる動きを強烈なトレンドと勘違いしてしまう

すると、この逆指値が狩られ価格が伸長した動きをみて、勢いがあると考えこのタイミングで買いを新規に入れるものが出てきます。それが、最初にいう「買ったら下がる」と嘆くことになるトレーダーです。すなわち、新規の買いが連続的に入っている場面ではなく、逆指値が狩られることオーバーシュートしたタイミングで買ったが故に、「買ったら下がる」ことになってしまうのです。もちろん、上昇トレンドに従った売買故に、彼らはおそらくポジションを持ち続け、その含み損は含み益に転じるでしょう。しかし、買ったタイミングが良くないのは確かですから、ふとした急落があれば、谷で買ったものより含み損に転じる可能性が当然高くなりますし、何より不安感があるので利益を伸ばせずすぐに同値もしくは微益で撤退してしまいます。そして、このような反射的な売買をしていれば、永遠に続くトレンドは存在しない以上、必然的にいつかは天井、すなわち逆指値による決済買いは入るけれども新規の買いが入ってこない価格帯で買ってしまう愚を犯します。そうすると、損切りができない人の場合はそのままロスカットされることも多くなるでしょう。こうやって「自分が買ったらいつも下がるのは何故なんだ」「ロスカットされた途端に反発した」と悩むようになるわけです。

つまり、彼は、その波動の勢いの主要原因が、新たな買いが入っていることによるのかそれとも逆指値を狩っているが故に生じているかの区別がついていないのです。逆指値はトレンドの推進を補助しますが、あくまでもトレンドの主役は新規の売買です。新規の売買がそれほど入っていないのに大量の逆指値が狩られることによって価格が大きく変動しているのだとすれば、一見強烈な値動きのようにみえてもトレンドとは評価されません。

さらに言えば、そのように区別する観念自体が無い人もいます。とすれば、ある強い波動が生じた時に、それが両者のいずれなのかを区別することが必要になります。その精度が高くなればなるほど、「買ったら下がる、売ったら上がる」という憂き目に会うことは減少していくでしょう。

大きな価格の動きの主要因が、逆指値の連鎖的売買か新規の玉かを区別する

逆指値の偏在ラインを見抜く

逆指値の連鎖的決済か新規の売買かを区別するためには、その前提として、どのあたりに多くの逆指値注文がおかれているかを分かっている必要があります。逆指値は均等に分布しているわけではなく、ある特定の価格帯に集中・偏在しておかれています。その価格帯とは、多くの場合なんらかのサポートの僅かに下・レジスタンスの僅かに上です。サポート・レジスタンスで価格が反発すると考えるからこそ、最後の防衛ラインとして位置づけ、これが突破されたら諦めようと思い、逆指値を置くわけです。

そこで、なぜ特定のサポートやレジスタンスに、逆指値が時として偏在するようになるかを考える必要があります。サポートやレジスタンスはあるチャートにおいて一つしか存在しないわけではありません。時間足が異なれば違うラインが見えてきますし、様々なテクニカル分析によって複数のラインが想定できます。また、ポジションには買い方と売り方との両方が存在します。ということは、あるチャートの一時点において、含み損を抱えるロングもいるし含み損を抱えるショートもいるということです。たとえば、現在の株価が100万円とした場合、110万でロングしている含み損のトレーダーもいるし、90万でショートしている含み損のトレーダーもいます。にも拘わらず、ある特定のライン上にはロングの売りまたはショートの買いの逆指値が多く置かれるという事態がなんらかの原因により生じているわけです。このような、逆指値がどのあたりに多く置かれているかを推測できれば、トレード上優位に働くのは明らかです。

どうやって推測するか

この点、前節でのべたようにオアンダ等が公表するデータを参考にする方法もあります。ただ、これはその会社を使用しているトレーダーだけのデータであることに注意が必要です。また、この価格まできたら損切りの注文を出そうと頭の中では考えつつも、瞬間的に生じる髭によって狩られることを警戒し注文をだしてはいない潜在的な逆指値の需要は推測するよりありません。なにより、機関投資家のAIやシステムトレードの個人投資家は、直前に条件が整うまで実際の注文をださず、プログラミングされた条件がそろった瞬間に一瞬で大量の注文を出してきます。

それ故、オアンダ等の情報に頼るばかりではなく、なんらかの総体的な原則モデルを持つ必要があります。そこで損切りの場合と同じく、典型モデルを構築しておきます。

逆指値の典型モデル

短期のトレーダーが逆指値を入れるラインを考える

トレンドが発生している最中であろうと、買った人と売った人は同数です。売り手がいるから買い手がいるし、買い手がいるから売り手がいます。ただ、価格が上がるのは、より高い価格でないと売らない人の方が安くても売る人より多く、逆に高くても買う人の方がより安くないと買わない人よりも多いというだけです。それがチャートの上げ下げとなって現れるわけです。

問題は注文の中身です。その注文の中身が、現物がメインかそれとも信用がメインかで値動きの意味は異なってきます。現物のトレーダー長期保有しようと考えているのに対し、信用のトレーダーは比較的短期に決済しようと考えています。換言すると現物の売買はファンダメンタルに基づきやすく、信用の売買はテクニカルに基づきやすいともいえます。現物に買いがでるのはファンダメンタルに良好な要素が発表され、長期保有してみようと考える人が多いが故ですし、逆に現物の売りが出るのは、ファンダメンタルに悪い要素が発表され、もう持ちたくないと考える人が多くでたが故となります。つまり、現物の売買はファンダメンタルによる部分が多く、これを逆に言えば、特にそういった要因が発生していない場合は、短期に利益を上げようとする信用売買の勢力がどのように振舞うかが逆指値の偏在を考える上で最重要となります。

このような短期勢はできれば当日にポジションを決済したいと考えています。株式であればオーバーナイトリスクがありますし、為替でも週末を挟めばその間にファンダメンタル要因が生じ状況が一変するかもしれません。24時間取引できるビットコインにしても、トレーダーには睡眠が必要です。もちろん含み益の状態であれば、同値に逆指値を置くことで安心が得られますが、ここでいう逆指値の偏在は、含み損を抱えているトレーダーが諦めて手放す場面がどこかが問題となります。

前日の高値・安値

この点、このような含み損の短期勢が逆指値を置く可能性が最も高いであろうラインは、前日の高値・安値と考えられます。前日の高値を更新するということは、前日のショート勢の全員が含み損になるということですし、前日の安値を更新するということは前日のロング勢の全員が含み損になるということだからです。とすれば、当日のチャートの価格がこの付近においてどのような動きをするかがその後の価格の推移を考える上で重要となります。

前日の安値・高値のラインを、逆指値を巻き込みつつ新規の玉が入ることで一気に突破した場合は、そのトレンドの継続する可能性が高くなります。しかし、一気に突破したとみえた直後に大きな逆向きの玉が入って価格が戻されれば、逆張りの新規玉が大量に入ったことを意味し、そのあたりがトレンドの限界だと考えられており、以後トレンドが転換する可能性が高くなります。

ぬるぬるとサポート・レジスタンスにまとわりつくような動きの場合は、逆指値がそれほど置かれていなかったということであり、かといって新規の反対玉が入ってくるというわけではない状態です。このような場合、含み損が継続しているということですから、たとえその後反発をみせたとしても、もう一度高値・安値のブレイクを試みてくる可能性が高くなります。

価格が反転するためには、信用含み損の逆指値が一掃される必要があります。それらは反対売買の決済によりトレンドの推進力を増す力があるからです。ただ、反転のためにはそれだけでは足らず、新規の玉が入る必要があります。逆指値が決済されているか、新規の玉が入ってきているか、サポート・レジスタンスに逆指値はあまり置かれていなかったのかを上記のように判断することで、今後の動きをある程度推測できるようになるのです。

もちろん、これはモデルケースであり、前日の高値・安値だけでなく、1時間足や日足においても基本的には同じように考えることができます。ただ、長大な時間で形成されたサポートやレジスタンスであるほど、データが巨大になる分どこに逆指値の偏在があるかを事前に予測する難易度は高くなります。まずは、前日の高値・安値の接触の際の動きを観察することでコツがつかめると思います。

歩値

この時、もう一つ参考にするとより判断の精度が高くなるツールがあります。それは株式における歩み値です。逆指値が連鎖的に決済される状況や新規に玉が入ってきている状況は特異性がありますので、歩み値の動きも特徴的な更新の仕方をします。この点については、いずれ比較動画をアップロードしようと考えていますが、端的なイメージを述べると、リズム感が異なります。それらの売買はAIによる瞬間的な売買がなされる場面です。最近はAIの進歩からか、以前によりはかなり自然な歩み値を描くようになり少し分かりずらくなっていますが、細かい均一に近い単位の売買が連続的に歩み値に並んでいきます。通常の売買の不規則性とは異なる一定の規則性がある動きをします。上に述べた前日の高値・安値の更新の際など練習の機会は多いので、意識的にみるようにすれば習得できると思います。

▷次節:5.4 サポート・レジスタンスのマーケット毎の特徴

-5 サポートとレジスタンス