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5 サポートとレジスタンス

5.4 マーケット毎の特徴

あるサポートとレジスタンスとが本当に機能するかを検討する場合には、マーケット毎の特徴を理解しておけば予測の精度は上がります。仮にチャートの形が相似の場合でも、サポートとレジスタンスの強度は株式と為替と暗号資産とにおいて異なります。これは、本質的価値を想定しうる株式、相対的価値を本質とする為替、本質的価値の存在を想定しうるものの2019年未だに不透明さが残る暗号資産、というそれぞれの特徴に由来するものです。

時価総額と発行済株式総数とから実体的価値を観念しうる株式は、ファンダメンタルの強固な裏付けがなければ本質的なブレイクは生じにくいと考えるべきです。つまり、為替や暗号資産と比較して、サポートとレジスタンスが機能する可能性が高くなります。また株式市場は、様々なマーケットの中でも不完全情報の程度がより低いという特徴があります。財務はディスクロージャーされますし、ある一国の中の特定の市場の中の一セクターの中の一企業の価値が株価となって表れるわけですから、情報の範囲が限定的です。つまり、株価というものは本質的価値の周辺をランダムに浮遊することはあるものの、情報の不完全性に由来する不合理な行き過ぎた売買が生じる可能性が相対的に低いのです。この信頼性はデイトレードにおいては更に高まります。企業の本質的価値が日中のザラ場の短い時間の中で大きく変化することは基本的には生じないからです。株式の場合にファンダメンタルな要因が発表されるのは15:00の大引け後のIRという形が通常です。このことは、株式においてはデイトレードと同時にスイングやバイアンドホールドの戦術が有効であることにつながっていきます。

とはいえ、株式のサポートやレジスタンスが破られるのは、常にその会社のファンダメンタルによる裏づけがある場合だけとは限りません。その企業のファンダメンタルによる裏づけがないにも関わらず、より上位足で形成されたサポートやレジスタンスが日中にブレイクされることもあります。この現象は、株式市場全体に資金が流入・流出している場合に、いわば株式全体の水準訂正としてなされます。つまり、日経平均やトピックス、あるいは特定のセクターに対する資金の流入・流出が観測できる場合に、連れられて上昇もしくは下落するという現象が生じます。したがって株式の場合は、個別株を売買する場合でも、常にダウや日経やマザーズ指数やジャスダック指数あるいは為替等にも注目し、その連動性を注意深く観察し見抜く必要がでてきます。

株式に対し、為替やビットコインは、不完全情報の程度が高いため、不合理な値動きが発生する可能性も高くなります。とりわけ、前稿で述べたように、多くのトレーダーが逆指値を置いているラインを意図的に故意に狙って投機的な売買を仕掛け、特定の勢力が意図的にチャートブレイクを図る場面が多く観測されます。

言い換えると、株式の場合はチャートブレイクの信頼性は他の二者の比較して低く、為替・ビットコインのチャートブレイクは騙しの可能性がより低いという感覚をもつことが重要です。とすれば、日中のブレイクをもってトレンドの発生と判断しエントリーをいれることは、株式においては慎重であるべきです。「サポート・レジスタンスは基本的に機能する」のテーゼをより強固に意識すべきであり、それを前提とする取引の有効性が高いということです。

デイトレードは株式においても有効な手法ですが、どの銘柄に参入するかが重要となります。日経か東証一部全体か東証二部かジャスダックかマザーズか、そのどこに資金が流れており、その中のどのセクターに、どの企業に資金が集中しているかを判断することが重要です。その日の資金の流入が多い銘柄においては、勢いに乗じてチャートブレイクが起こる場合もありますが、熱が一旦引くと何事もなかったように元のサポート・レジスタンスの内側に戻ってくるケースが多く観察されます。取引時間が短く、本質的価値を観念しうる株式の場合、あまり筋のよくないポジションを高値掴みしてしまうと、その救出に何日も、場合によっては何ヶ月何年もかかってしまうことがあります。株式マーケット全体の水準訂正が生じている場合は別として、原則として売上げ、つまり純利益に直結しないIR等にあまり過度な期待をしないことです。

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