6.1 的確な判断を行うために

テクニカル分析とファンダメンタル分析とは、運に頼らない戦略的売買を継続的に実行するために修得すべき必要な技術です。しかし、正確にいえば、デイトレーダーとして利益を上げていくためには、これだけでは未だ不十分です。

的確な判断を行うために

「何をすべきか知っている」と「すべきことを実行できる」は別もの

利益をあげるために必要な分析方法がわかっただけでは、ある手法によって分析しなければならないことを単に知っているだけにすぎません。これを実際に実行できるかはまた別の問題になります。つまり、知っていても実行できない場合があるということです。その原因については、様々な要因が考えられます。

認知の錯誤や不協和をできる限り排除する

まず、人間は特定の状況下では簡単に認知の錯誤を起こします。また、今までにインプットしてきた情報や手探りで模索してきた中で身についた体感が、新しい情報との衝突を起こし、不協和となって現れる場合もあります。

これらの錯誤や不協和に負けないためには、大きくいえば、どんな状況におかれても正しい認識のもとに健全な判断を下すことができる人間にならなければいけません。柔軟な心で偏見を持たず、真実を尊重し、事実に対して自分をごまかさないという意味での誠実な人間であるよう努める必要があります。そうした認識のもとで、知識を習得し、経験を積み、判断力を身につけ、軌道修正を怠らなかった結果として、マーケットから利益を回収できるのだと考えます。

マーケットにおいては、ある特定の人格類型が、決定的ではないにせよ有利に働く場合があることは間違いないでしょう。真実に誠実であることが必ずしも道徳的だとは限りませんし、ましてマーケットは善悪を追求する場所ではありませんが、少なくとも己を省み自分自身を直視する者には恩寵がもたらされ易いと思います。そうした意味では、相場とは直接には無関係の起臥寝食の全てにおいて、一つ一つ丁寧に生きていくことが大切です。

とはいえ、これではあまりに大上段の課題となります。一生を通じて完成させていくべき問題であり、容易に解決策が導かれる問題ではありません。

それでも確実にいえることは、マーケットにおける特定の状況下のもとで発生しやすい錯誤や不協和を類型化し、これに対する対処法を可能なかぎり定量的なパターンとしてモデル構築することは多くの人にとって可能であるということです。

本章では、身に着けた技術的知識を十全に発揮すべく、正確な認知と判断を妨げる様々な要素をできるかぎり排除していくことを目標とします。

▷次節:6.2 待ちの重要性

-6 認知バイアスの排除