トレンド転換の最も基本にして最重要となるパターンが、ダブルトップ・ダブルボトムです。トレンドとは、前回の高値または安値を越えて形成される連続的な山または谷であるところ、前回の高値および安値を明確に越えることに失敗した最も原初的な形態がダブルトップ・ダブルボトムであるからです。両者の中でも、ダブルトップはより条件が簡潔であるため最初に取り上げます。
ダブルトップの成立条件
テクニカル理論の元祖の一つであるダウ理論においては、トレンドとは、高値・安値のそれぞれがその直前の高値・安値より上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドと定義します。前節でみたようにトレンド発生は例外的事象ですから、トレンドとは連続的に発生する例外的事象です。従って、上昇トレンドの最中に前回の高値を越えられなかったとしても、それはあくまで原則への自然な回帰であって、即座にトレンドの転換を意味するものではありません。言い換えるならば、価格には前回の高値の山と安値の谷において跳ね返されやすい性質があるということです。従って、前回の山を越えられなかったからといって、即座にダブルトップが完成するものではありません。前回の山を越えられなかった場合、その後の展開としては以下の図1と図2の二つのパターンがあり得ます。図2を用いて説明すると、前回の高値iをkにおいて越えられなかったとしても、必ずしも下降トレンドへの転換を意味しません。高値と安値の範囲内であるij間の価格帯をl,m,nにおいて彷徨いつつ保ち合いを形成し、最終的にはoにおいて高値をブレイクし上昇トレンドが再開することはよくあります。また、トレンド継続の可能性の方が高いものの、nからそのまま下落していくパターンもあります。
ダブルトップの完成は図1のfにおいてなされる点に注意が必要です。すなわち前回の安値であるdを基準とするサポートラインを終値ベースで割って初めてダブルトップが完成するという点は改めて確認しておく必要があります。
ダブルトップの成立を予測しショートをとる戦術
ダブルトップの成立をあらかじめ予測し、eの付近においてショートポジションを建てる戦術は定石といってよいと思います。実際、cを通る平行線のやや上に逆指値を置けば損切ラインが明確であり、使いやすい戦術です。しかし、繰り返しいうように、最初の試みで前回の山の頂点cを越えられなかった事実をもって、直ちにダブルトップと判断してはなりません。それはむしろ原則への回帰であり、自然な現象です。一旦の休息の後に再び上方向へのブレイクがoでなされる方が、むしろ確率としては高い点には重大な注意を払う必要があります。とすれば、e付近でショートポジションを構築するか判断するには、単にチャートの形から雰囲気だけで決めてはなりません。リアルタイムでチャートが描画される以上、これが図1のダブルトップなのか図2のトレンドの継続なのかを確率的優位性をもって判断できる何らかの別の材料が必要になります。この材料については、出来高を二次指標とする方法と直前の谷を二次指標とする方法の二つがあります。参照の利便性のため、図を再掲した上でみていきましょう。
出来高を二次指標とする方法
まず、出来高の観点から考えて見ます。出来高を二次指標とする判断方法は、前回の山を越えられるかという点においては優位な判断基準となります。通常、前回の高値更新に失敗するケース、すなわち図1のダブルトップにおいても図2の保ち合い移行においても、2つ目の山付近においては最初の山付近より出来高が明らかに減少します。図でいえば、de間もしくはjk間においては、bc間もしくはhi間よりも出来高が減少するのが通常です。付記していうと、この間の出来高が少ないにも関わらず山を越えた場合は、ヘッドアンドショルダーの可能性が高くなります。ただ、ヘッドアンドショルダーは、真ん中の山が逆指値を巻き込んで大幅に出来高が高くなり、買いのクライマックスを迎えることで形成されるパターンもあります。
話を戻すと、eまたはkで前回の高値の更新に失敗しチャートが下方に向かったとしても、トレンドの継続が一旦とまったというだけで、その時点では図1のパターンか図2のパターンかの判別はまだできません。図1になるかか図2になるかの判別のために注目すべきは、高値を超えられなかった次の動きです。すなわち、図1のダブルトップ形成の場合は、ef間の出来高がde間と比較して大きくなる傾向があります。これは高値圏とみて売りにでるトレーダーが多く出ているからです。これに対し、図2のトレンドの継続の場合は、kl間で出来高が増えるケースはあまり観察されません。むしろkl間、lm間、mn間にかけてどんどん出来高が減少していく傾向があります。
直前の谷を二次指標とする方法
次に、高値に挑む直前の谷に注目する方法があります。図でいえばdもしくはjがそれに当たります。この谷が前回の高値であるaもしくはgの価格を下回るかには一定の傾向が観察されます。すなわち、図1のようにdがaの価格を下回った場合には、ダブルトップをつける可能性が高く、逆に、図2のようにjがgの価格を下回らなかった場合には、トレンドの反転は生じず保ち合いか再度の上昇を見せる傾向があります。
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