ダブルトップとダブルボトムのエントリーポイントの違い
ダブルトップとダブルボトムとでは、エントリーポイントが非対称である点に、特に注意が必要です。ダブルトップはその成立を予測してポジションを建てるのに対し、ダブルボトムはその成立を確認後に戻しを待ってポジションを建てる方が勝率は高くなります。
ダブルトップのエントリーポイント
上図で説明すると、ダブルトップ(図1)では、cを通る平行線がなんらかのレジスタンスに当たる場合に、出来高や歩み値の推移を観察しつつ、価格がde間を動いている間に、eにおけるダブルトップを予測できたらポジションを取ることを決断し、cの平行線上のeに売り指値を置きます。
ダブルボトムのエントリーポイント
一方ダブルボトム(図3)では、オからの反発がエを通る水平線をカにてブレイクしたことを確認し、価格がキク間を移動している間に、水平線がサポートに転じるのを予測して、エカを通る水平線上のクに買い指値を置きます。
エントリーポイントの違いが生まれる理由
なぜこのようにすべきかについては、主に二つの理由があります。
ダブルボトムは成立する可能性が低い
第一の理由は、前節以前で述べたように、ダブルボトムは、ダブルトップよりも成立する確率が低いため、より慎重なエントリーが求められるからです。
ダブルトップは一直線に下落していくケースが多くみられる
第二の理由は、ダブルトップは成立ラインを突破(f)後に揺り戻しが起こらず、一直線にそのまま下落していくケースが多くみられるのに対し、ダブルボトムは成立ラインを突破(カ)した後でも、一旦その成立ラインまでの戻し(ク)が入り、成立ラインがサポートに転じたことを確認する動きがしばしば観察されるからです。
したがって、ダブルトップの場合、頂点付近でショートポジションを建てておかないと、その後のネックライン突破(f)後に戻りが無かった場合にエントリーすべきポイントがつかめず、価格の下落をただ眺めているだけになってしまう可能性があります。したがって、なるべくダブルトップの頂点(e)を予測してエントリーした方が利益が出やすくなります。
一方、ダブルボトムの場合は、形成に時間がかかる分、高い確立で戻しがあるため、ダブルボトムの底(オ)を無理に狙らずとも、戻り(ク)を待ってみた方がより高い勝率でエントリーできます。
人間の自然な心理に逆らう行動が要求される
ただ、このようにすべきと理解できても、実行の際には心理的抵抗を感じるのが一般的です。というのも、これらのエントリーポイントは、人の自然な心理に逆らうものだからです。ここは本能に逆らう行動が要求される場面です。
ショートは理論上は無限損失の可能性があります。そのため、ポジションをとってすぐに含み益にならないと強い不安を覚えます。言い換えると、同額で比較した場合、ショートの含み損の恐怖は、ロングの含み損の恐怖よりも強く感じるのです。そのため、ショートは下落トレンドがはっきりと表れてから入ろうとする一般的傾向がでてきます。つまりこの場合ですと、ダブルトップの成立を確認してからその後にショートを建てようとする傾向があります。頂点付近でショートを入れるということは、リアルタイムにおいては上がってきているチャートに逆らうことになりますから、この恐怖心が頭をかすめ萎縮してしまい、行動が遅れがちになるのです。しかし、天井圏での下落トレンドへの転換はしばしば急変によってなされます。底形成の時間よりも天井形成の時間の方が短く急であることがほとんどです。エントリーのみならず既存のロングポジションでも、順調に含み益が伸びているとほくそ笑んでいたら、突然に大量の売りが降ってきて一転して含み損になるという事態が起こりやすいということでもあります。
それに対し、ロングは理論上は損失が限定されます。また長期で見た場合、株式なら企業は時間的経過と共に成長していきますし、ビットコインもおそらくはそうでしょう。為替ならスワップが入ります。そのため、エントリーに際してある種の強気なマインドが姿を現しやすくなります。またロングの場合、中長期保有に転じることができる可能性がありますから、その意味でもなるべく有利な建値で取りたいという欲もでてきます。さらには、底値で買ったポジションを誇りに思いたい気持ちに支配されることもあります。そうなると、もはやマーケットと無関係な見栄に突き動かされた売買になってしまいます。光を散らしながら垂直に落ちていくナイフは時として美しく、それゆえに手を伸ばしそうなりますが、掴み取った後に掌に残るのは、その輝きではなく己の鮮血です。
ダブルトップとダブルボトムとは、単純に上下が反転したものではない
重要なのは、ダブルトップとダブルボトムとは、単に図形が反転したものではないということです。共通する点も多いですが、異なる性質をもつ部分もあります。その違いとは何か、なぜその違いが生じるのかを理解しておかないと、相似したチャートを機械的に抜き出し条件反射的にエントリーし、後は運否天賦に任せるトレードになってしまいます。運は戦略とは最も離れた場所に位置する概念です。
▷次節:9.7ヘッドアンドショルダー