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10 為替のトレンド発生要因

10.1 ファンダメンタル分析の危険性

日足や3日足レベルの方向性が分かれば、戦略のハンドリングは容易になります。そこで、トレンドを友とするために、"彼"のとる行動の原因を探っていくことは、修交を深める有益な手段です。しかし、その全てを知ろうとすることは、返って友情にとって害になる場合があることを最初に指摘しておきます。

『荘子』に「君子之交淡如水、小人之交甘如醴」という文言があります。書き下し文で「君子の交わりは淡きこと水の如し、小人の交わりは甘きこと醴の如し」。立派な人物は人との交際が水のようにあっさりとしている、つまらない人物は甘酒みたいにべったりとしているという意味です。"彼"との付き合いも、この恬淡とした君子の交わりであるべきです。

トレンドの原因を求める態度は、必然的にファンダメンタル分析へ接近します。しかし、ファンダメンタル分析は時として有益ですが時として危険でもあります。なぜなら、ファンダメンタル分析は、予測に重きが置かれ易い傾向があるからです。繰り返し述べているように、未来の予想は、トレードにおいて収益を正とするための中核要素ではありません。予測の精度が高い場合収益の効率性は向上しますが、トレードの最終的収支をプラスにすることを保証するものではありません。この点については、ここでもう少し説明しておきたいと思います。

仮にあるトレーダーが、ORTHRUS STRATEGYで定義する”戦略”に相当する思考を一切備えず、しかしその一方で非常に精度の高い天才的な予測能力を備えていた場合に、その運用成績はどのようになるか。恐らく彼は非常に早いペースで資産を増やし、そして恐らくは、最終的に全てを失うでしょう。トレードにおいては一回の失敗で全財産を失う場合が存在し、且つ100%完全に未来を予測することは不可能だからです。トレードは、失敗という性質を必然的に内在します。したがって、これに対するコントロールを想定していないトレードはいつか破綻します。今していなくてもいつかします。しなかったとしたら運が良く且つ勝ち逃げした人だけです。運で得た利益は運で失いやすく、勝ち逃げは利益の継続性の放棄です。継続性のない利益は投資で築いた財というより泡銭という言葉が似合います。

ファンダメンタル分析は、対象が無限に広がってしまいます。無限の情報の中で己を見失い目的と手段とが逆転しないよう、よくよく注意する必要があります。不完全情報のマーケットで戦うということは、不確実な対象を如何にコントロールするかということです。ファンダメンタルは、衆知となった段階では既にチャートに織り込まれいる可能性が高く、また、それだけ時間が経過しているということは反転の可能性も高まっているということです。リアムタイムでの判断基準として作用せず、後からチャートを振り返って、これが原因だったんだな、と納得するだけでは利益獲得のスキームとしては全く機能していません。それどころか、間違った自己のポジションを正当化するために、世界中のあらゆるファンダメンタルをかき集めて納得しようとするようでは、もはや害にしかなりません。

何度も繰り返しますが、私はファンダメンタル投資を否定しているのでは全くありません。ただ、ORTHRUS STRATEGYが実現するデイトレードによって数十万の原資を年次で数百万~一千万超とする戦略にとっては、ファンダメンタル分析は今までの戦略をより優位に活用するための位置づけに過ぎず、主役ではないということです。各人のトレードの最適解は自分で見つけるしかありません。ORTHRUS STRATEGYは一人のトレーダーの体系的戦略を見せることによって、各人が最適解を見つける際のヒントとなることを目的としています。

付記事節として、未来予測に重きが置かれてしまう可能性について、テクニカル分析でも同じ危険は起こりうるのではないかと思われた方もいるかもしれません。この点、確かに同じなのですが、その性質上ファンダメンタル分析は、テクニカル分析よりも未来予測志向が強くなるのです。テクニカル分析はつまるところチャートの描画が第一義で、トレーダーがなすべきはそれに対する解釈であるという受動性があるのに対し、ファンダメンタル分析は無限の情報を取捨選別しこれを自由な発想で組み合わせ新たな知見を作り上げていくという能動性があります。自分で自由に未来を考えることができ、思考の制約がないことがマイナスに作用します。また、テクニカル分析はその性質上、いくらかの戦略的要素を内在します。それに対しファンダメンタル分析は未来予想が当たれば勝ち外れれば負け、負けた場合はこれまたファンダメンタルに基づく「適切な」価格で損切りするわけですが、この「適切な」価格自体が自然科学的事実ではなくファンダメンタル分析に基づくものですから、ここでもまた予想が的中するかが問題となります。つまり、ファンダメンタル分析による売買は、本質的に賭博的要素を含みます。戦略とは運の対義語であることを、今一度記しておきます。

以上を前提とした上で、デイトレードにおける戦略の効用性を高めるファンダメンタルの用い方を次章以降で解説します。トレンドを友とすべく、節度ある距離感をとりつつ誼を深めていきましょう。

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