最初に、代表的な三つの仮想通貨、ビットコインとイーサリアムとリップルについて、デイトレードに必要な範囲で簡単な説明を行っておきます。ORTHRUS STRATEGYではビットコインのトレードを中心としますが、別の何かと比較することはある存在を理解するために最も有効な手段の一つです。また、次節以降にて行う解説の前提となる知識もできる限り同時にお伝えしていきます。
ビットコイン
ビットコインは、一言でいえば通貨、つまり決済の手段です。決済の手段、つまり物の交換手段には、信頼性が絶対に必要です。お金は物理的には唯の紙とどこにでもある金属の塊とでしかありませんし、電子マネーにしても唯の電磁的な記録の塊でしかありません。それが交換手段として社会で用いられているのは、信頼性があるからです。信頼性の中身は、ある日突然使えなくなってしまうことはない信頼、価値が極端に下がりはしない信頼、他人も物の交換手段として認めてくれる信頼などです。これらの信頼は発行主体への信頼から生まれます。日本の法定通貨である円は日本銀行が発行主体ですし、電子マネーの一つである楽天Edyは楽天が発行主体です。日本銀行や楽天が信頼できる組織であるからこそ、ただの紙や電子記録が物の交換手段としての価値をもつわけです。このように信頼できる発行主体が管理する仕組みを「中央集権的な仕組みで運営」としばしば表現します。
これに対し、ビットコインの技術的革新は、発行主体が存在しないにも関わらず、信頼性の裏付けがあることです。換言すれば、だれか信頼できる管理者がいなくとも、情報記録システムに取引情報を送信しそれが処理されることで信頼性を確保しうる新たなテクノロジーが開発されたということです。この記録システムの中核がブロックチェーン技術です。このように管理者がいない仕組みを「非中央集権的な仕組みで運営」としばしば表現します。
この決済手段は、従来の決済手段と比較して、手数料が安く、銀行に依存せず利用することができ、しかも迅速になされます。商売で最終的に問題になるのは、きちんと代金が支払われるかどうか、支払ったことが正確に証明できるかです。この問題が解決されれば、世界全体の経済活動が大きく活発化することは直感的に理解できると思います。
ブロックチェーンは、不正な改竄が極めて困難な情報記録システムのテクノロジーです。ここで注意しておきたいのは、「ブロックチェーン技術=ビットコイン」ではないことです。ビットコインは、ブロックチェーン技術を用いた決済手段の代表的なものではありますが、この技術を用いた決済手段はビットコインだけではなく、またブロックチェーンは決済以外にも幅広く応用が期待されます。
とすれば、決済手段として最適な技術構造を持つ仮想通貨がビットコインではないとされる未来も考えられます。ビットコインはあくまでも現時点におけるブロックチェーン技術を用いた決済手段の最有力候補であるにすぎません。状況により、別の何かに取って代わられる可能性はあります。また、ブロックチェーン技術が社会のある分野で採用されたというニュースが報道され、それを受けてビットコインのチャートが上昇することがしばしばありますが、ビットコインはブロックチェーンを用いた決済手段の代表的候補でしかありませんから、「ブロックチェーンの普及=ビットコインの普及」ではありません。この点は、そのニュースの重要性を図る点で考慮に入れる必要があります。それにより、ブロックチェーンの普及を材料として一時的に上昇しただけなのか、それともビットコインの本質的な価値の上昇があったのかを見分けることができます。
この点、もう少し敷衍しておきます。ブロックチェーンは不正な改竄が極めて困難な情報記録システムであるところ、不正な改竄が最も問題になるのはお金に関することでしょう。お金に関する最も直接的なものは通貨です。偽札は厳しく刑法で罰せられますし、決済して本当にお金を払ったのに相手から貰っていないと主張された場合に反証できなければ困ります。それゆえに、決済の手段としてこの技術を用いることが注目されたわけです。しかし、正しい情報であることが求められる分野は、お金そのものや決済だけに限りません。金融、証券、保険、知的財産権、土地登記、著作権、婚姻などといった決済以外のお金の流れや契約や権利に関することを第三者が管理することなく正しさを証明できるようにななれば、莫大なコストが削減できます。正しさの証明を担保するには非常に膨大な手間と費用がかかりますが、それが削減できるわけです。こうした分野にブロックチェーンが採用されることとビットコインが決済手段として採用されることは別である点は注意しておいた方が良いということです。
話をビットコインに戻しますと、ビットコインは発行枚数の上限が2100万枚となるよう設計されています。上限があることによって希少性が生じ、その希少性がビットコインの価値の担保となります。
ブロックチェーンを用いた決済手段として最有力候補ではあるものの、処理速度や決済・送金の際の手数料の点で、ビットコインの後発的存在に後れをとる部分もでてきています。
イーサリアム
イーサリアムの特徴は、ブロックチェーンの上にプログラミングができる点です。つまり、イーサリウムを土台として、アプリケーションを開発できます。そうして開発されたアプリは、ブロックチェーンを用いることで特定の管理者がいなくても運営できるようになります。つまり、システムがダウンすることがないメリットが生じます。
イーサリアムを土台として開発されたアプリでは、そのアプリ内で実行する作業の代金は、ETHで支払います。たとえば、ゲームでしたらアイテムを購入したり他のプレイヤーへアイテム売ったりする際にETHを用いるわけです。いついつにいくらで誰々に売りましたという記録が、イーサリアムブロックチェーン上に記録されていきます。イーサリアムで開発されたアプリケーションの需要が増えればETHの需要も増え、価格が上昇します。
ETHの特徴として、発行枚数上限が現時点では存在しません。これは、イーサリアムがアプリケーション開発のための土台としての存在である現われです。
アプリケーションの開発ができる特性上、ソフトウェア技術者がどの程度イーサリアムを土台とする開発に目を向けるかに今後の発展がかかります。
リップル
リップルは、端的にいえば、ビットコインに代表されるブロックチェーン技術への対抗馬です。リップルがビットコインやイーサリアムと大きく違う点は、発行主体が存在する点です。その発行主体がリップル社です。リップル社は、事業を展開している民間企業です。どのような事業かというと、国際決済・送金システムで、この点はビットコインと競合します。リップル社の提供するサービスの特徴は、送金処理速度がビットコインよりも速くしかも低廉な価格で実行できる点です。膨大な数学的計算によって承認されるビットコインとは異なり、リップル社が選定した一部の承認者のコンセンサスを得ることで取引が実行されるので、迅速に安く取引の承認が可能となる仕組みです。その送金の際の手数料としてXRPが使われます。また、XRPを介することで為替を簡便に実行できるブリッジ機能も備えています。
事業である以上、その成否がXRPの価格には重要な影響を与えます。リップルが多数の金融機関に採用され頻繁に使われるようになれば、XRPの需要が高まり価格も上昇します。これはいわば、XRPはリップル社の株式のようなものだと考えるとイメージしやすいと思います。ただ、株式はその会社の「社員たる地位」であるのに対し、リップルは法的地位を持つものではありません。
株式とは「均一に細分化された割合的単位の形をとる、株式会社の社員たる地位」です。地位ということは、権利もあり義務もあります。権利としては自益権、すなわち会社から経済的利益を受け取る権利があります。配当金を請求する権利や、倒産したときに残った財産を分与せよと請求する権利などです。もう一つ、共益権、すなわち会社の経営に参加する権利もあります。株主総会における議決権が代表的です。一方で、その会社が倒産すれば、その株式を購入した出資額の限度で有限の責任を負います。これに対し、XRPには自益権も共益権もありません。
発行主体があるということは、XRPの供給量をリップル社が調整可能なことを意味します。つまり、XRPの価格はその需給によって決定されるところ、余りに高額になってしまうと敬遠されますから自社のもっているXRPを市場に売却することで価格を引き下げることができます。また、発行枚数の上限は1000億枚であり既に全て発行済ですが、後から変更することが技術的には可能です。
リップルに関する報道で注意したい点は、しばしばリップルが「採用」もしくは「提携」という表現が使われますが、それがどの程度のものであるかは個別の事象によって異なる点です。このような点も含め、チャートにおいても株式の動きとの共通性が見られます。
まとめ
上記の特徴をもって、ビットコインをカレンシー型、リップルをアセット型と呼ぶことがあります。カレンシーは通貨、アセットは資産の意です。また、決済手段か否かに着目し、ビットコイン・リップルを決済型、イーサリアムをプラットフォーム型とする分類もあります。
なお、ORTHRUS STRATEGYではデイトレードが主体であり、かつ利小損大の戦略のもと、基本的にはFXが広く提供され流動性も高くスプレッドも小さいビットコインがその取引の90%以上を占めます。アルトコインやICOは大きな利益を獲得できる可能性があることは事実ですが、ORTHRUS STRATEGYではデイトレードによる利小損大戦略を貫く点については本節の最初に述べたとおりです。