各曜日別の時間的要因について説明します。最初にまとめると、注意が必要なのは月曜と金曜と日曜夕方以降、トレードしやすいのは火曜と木曜です。
一週間を通じた時間要因
月曜日
為替においては、窓埋め現象が生じる可能性が高く、これを利用したトレードが可能です。有名にして、今なお確率的優位性がある有効な戦術です。週末に起こったファンダメンタル要因を受けて大きくギャップが発生した場合でも、やはり一旦は窓を埋める方向へ動くことが多くなります。ただ、業者によっては窓埋めした後の時間からでしか取引が可能でなかったりスプレッドを大きく広げてきたりするので、この戦術を用いる場合は取引で使う業者の選定が制限されることになります。
また、土日にたまった輸入決済をこなすために、午前9:55の仲値に向かってドルが買われやすい傾向があります。特に五十日(ごとうび)と重なった場合、この傾向はより顕著になります。このような傾向が見られた場合には、仲値が決した後にドル円が急落することが多いため、9:55前後にドル円のショートを入れておけば、大きな利益を得ることが出来ます。
ただ、あらゆるデイトレードの形態でも、月曜日の為替が一番難易度が高いと個人的には感じます。週末に起こったイベントをマーケットがどのように解釈し消化するかを読むことが難しいため、窓埋め後・仲値後は一旦は見に回った方が良いでしょう。
株式は、週末で蓄積された熱量が一気に放出されるため、寄り付き後のボラティリティが大きく、デイトレーダーにとっては旨みのある時間帯です。単純なスキャルピングでも利益がだしやすく狙い目といえます。ただ、今週の全体の方向性が見えにくい点は為替と同じですので、寄り付き後以降は、比較的控えめに様子を伺いつつ慎重にトレードする方がよいでしょう。
ビットコインは、従来、月曜日に上がりやすい優位な傾向がありました。これは、週末に口座を解説した新規参入者が週末に資金を準備し、金融機関の営業開始曜日である月曜日から実際にトレードを行う傾向があるからと説明されます。ただ、この説明はかつて仮想通貨の黎明期には該当しましたが、それなりに市場参加者が増えた現在ではその法則性は希釈されていると考えた方がいいでしょう。とはいえ、アノマリーとしての有効性はいまだ存在するように感じます。これは「ビットコインは月曜日に上がりやすい」という言説が人口に膾炙した結果としての一種の自己実現による部分もあるのではないかと考えます。というのも、金融機関の着金がなされる09:00以降ではなく、それ以前の深夜02:00前後から早朝09:00前後にかけての時間帯に上昇が生じるケースが近年は散見されるからです。後述しますが、ビットコインは日曜日にベアリッシュな傾向があり、その回復が月曜日の深夜から早朝に当てられている印象です。兼業の方にとっては、月曜日の出勤を考えると監視することが難しいかもしれませんが、専業の方であれば、日曜日の深夜から月曜の午前中までは、ビットコインと併せて前述の為替の窓埋めや株式の活発な寄り付きを利用したトレードができることもあり、可能な限り通して起床しておく方がいいと思います。
今週の流れを決める重要な曜日である一方、流れが読みにくい曜日であるので、月曜日の午前中までは頑張って目を凝らしてトレードし、その後にゆっくり就寝し、起床後は基本的に様子見重視のスタイルで行く方が良いと思います。
火曜日
為替、株式、ビットコイン共に、基本的には月曜日の流れを引き継ぎやすい傾向があります。前述のように、月曜日という基準ができますので、月曜日の高値・安値や騰落率等を参照にサポートラインやレジスタンスラインを設定しやすく、トレードしやすい曜日です。また、株式においては、前週の信用残が発表される曜日です。
水曜日
ここは注意すべき曜日となります。週全体を後から振り返った場合には、ここでトレンドが転換しているケースが多い一方で、トレンドが継続して強い場合には火曜日の流れを受け継ぐ傾向があるからです。つまり、後からの結果論としては重要な曜日となるのですが、リアルタイムで判断を下していくデイトレードにおいては、月曜とならんで難易度が高い曜日です。対処法としては、相場の急変があることを意識しつつ、その週、つまり月曜日と火曜日の高値・安値を更新した場合には、トレンドに従っていくという意識が良いと思います。
木曜日
為替、株式、ビットコイン共に、水曜日の流れを受け継ぎやすい曜日です。私自身のトレード記録を参照すると、為替と株式では、統計的な優位性を伴ってこの曜日の利益率が高い傾向が一貫してあります。なお、ビットコインでは曜日別の統計をとっていませんが、トレードしやすい印象はあります。あまり何も考えずに、というと誤解があるかもしれませんが、勝負しやすい曜日です。
金曜日
為替と株式においては、今週の終値が決定される重要な曜日となります。注意すべき点として、引けの直前になって、急にそれまでのトレンドに逆らった手仕舞いや来週のギャップ狙いの売買がなされる場合があるということです。
また、株においては14:00以降、為替においては、深夜(土曜日00:00以降)の売買動向を見ておくことが、来週の値動きを考える上でヒントになります。突然の用事などで相場を離れざるを得ない場面は一年の内で何度か発生しますが、この時間帯にポジションを放置しておくことは危険であり、また来週の売買を考える上で重要な参考となる時間帯ですので、実際に取引せずともできる限りモニターの前にいるべきです。
この曜日は株式と為替に注力しており、ビットコインにはあまり触らないので詳細な言及を避けますが、週末の空白を挟まない分、為替や株式ほど相場の急変を意識する必要はないと思います。なお、CMEよりIMMの発表が日本時間土曜の05:00にあります。
土曜日
為替と株とは休みであるためビットコインに集中でき、かつトレンドも読みやすいため、木曜日に次いでトレードしやすいと思います。月曜日から金曜日までの流れとは逆に動くことも多いですが、一度動くと一方向に進みやすい特徴があります。
日曜日
土曜日と同じくビットコインに集中できる曜日ですが、やや注意が必要な点もあります。というのも、午前中は基本的に土曜日の流れを受け継ぎますが、夕方から翌月曜深夜02:00頃にかけて急変するケースが見られるからです。特に土曜日にトレンドに乗って大きな利益が出ている場合は、トレンドの決め付けという認知の歪みが生じている可能性があります。急変に対応できる意識は常にもっておくことが肝要です。なお、私個人は、15:00~翌月曜02:00は原則としてポジションサイズを縮小するルールをとっています。
総論
ラリー・ウィリアムズがいうように、曜日別のアノマリーはその時々の相場環境により激変する可能性があります。単純に騰落率のデータを参照に、この曜日は上がりやすい、この曜日は下がりやすいと考えるのではなく、今の相場においてその曜日がその週全体の中でどういう役割を果たしているのかということをマーケットの特性と掛け合わせて理解することが大切です。
▷次節:8.5 一日を通じた時間要因